アンヘレスのバーをうろうろしていると、女たちはまず最初にこのように尋ねてくる。
「ハロー。どこから来たの?」
いつも同じことを聞かれるので、今度は私が聞き返す。「君はフィリピンのどこから来たの?」
多くの女性が自分の出身地を言うのだが、だいたいは私の分からない地名なので、いろいろと教えてもらいながらフィリピンの地理を覚えていく。
ここ2日ほど、アンヘレスのバーで片っ端から同じ質問をしているうちに、何人もの女性が「タクロバンから来た」と言うことに気づいた。
タクロバンはレイテ島にある小さな湾岸都市なのだが、そこから多くの女性がアンヘレスに流れていたのだった。アンヘレスはフィリピン中から女性が集まってくる場所なので、タクロバン出身の女性がいてもおかしくない。
しかし、タクロバン出身の女性は他の出身者と違う事情があることを私は、ひとりの女性の述懐を聞いて思い出した。タクロバンの女たちは、地獄に堕ちていたのだ。