私は二十歳のときに、初めての海外、初めてのひとり旅、初めての長期旅行にタイを選んだが、このときの「旅の経験」が私の人生を決定付けたと言ってもいい。
初めての旅にタイを選んだのは偶然だったが、幸せだったと今でも思う。
もし、このときにインドやバングラデシュのようなハードな国を選んでいたら、感受性の強い私は現地のしたたかな男や女たちにめちゃくちゃに叩きのめされて、二度と立ち直れなかっただろう。
タイの文化は私に優しかった。そしてタイの人たちも、まだ若く世間知らずの私に、とても優しかった。この初めての旅の想い出は、今でも私の何よりも大切な宝物である。
このときに起きた出来事や知り合った人たちのことは、とても強く心に刻まれて、つい昨日のことのように思い出すことができる。
それから私の人生は海外を野良犬のようにうろつき回ることに費やされて、私の関心もそれだけになった。