日本はかつて売春する女性を表すのに多彩な言葉を使っていた。売春婦、売笑婦、酌婦、夜鷹、娼婦、娼妓、淫売、淫婦、淫売婦、私窩子……。
これらは、すべて同時代に使われていた言葉である。
もちろん、こうした言葉は同じ「売春する女性」であっても微妙に意味が違う。女性がいた場所や、その売春ビジネスの種類によって使い分けされていた。
かつて売春は合法でもあったので、遊郭・赤線地帯の娼婦を「公娼」と呼び、それ以外を「私娼」と区分けする言い方もよく使われていた。
公娼と私娼の区分け以外にも、集娼、散娼という区分けもあったくらい多彩だった。
これらの言葉が急速に廃れていったのは赤線・青線が廃止され、公娼制度が否定されたからだ。売春禁止法が効力を発し、高度成長で女性が身体を売る女性が激減したので売春婦を表す多彩な言葉も死んだ。
「売春」は法律語として採用されたので「売春」「売春婦」という言葉が他の言葉を押しのけて生き残った。