ジャマイカと言えば、ボブ・マーリーやウサイン・ボルトを思い出す人も多い。ジャマイカはカリブ海に浮かぶ小さな島で、一人あたりの名目GDPはIMFのデータで4931ドル程度しかない。典型的な貧困国である。
国にはさしたる産業はなく、失業率は数十年も前からずっと10%以上であり、首都キングストンは凄まじいほどの治安悪化に揺れている。どれほど治安が悪いのかは、外務省がこう書いているほどだ。
『殺人事件発生件数は人口10万人当たりで日本と比較すると日本の約40倍。他の犯罪発生件数を比較しても強盗事件が約30倍、強姦事件が約20倍、拳銃発砲事件が約4000倍……』
多くの男たちが自衛のために銃を持ち歩いているのだが、この銃が犯罪を増長させている。強盗もレイプも銃が使われるので、抵抗した女性がしばしば撃ち殺されている。
さらに犯人もまた犯罪に失敗して路上で捕まると、そのまま通行人たちにモブ・ジャスティスで袋叩きにされて殺されるような土地柄でもある。
この暴力都市キングストンを離れて郊外に行くと、今度は絶対貧困の光景がそこに現れる。一日に1ドルも稼げない人たちが夥しくひしめき、スラムに暮らす。
ところが、とても皮肉なことがある。この地獄の貧困国ジャマイカに住む人たちのことだ。