「私ね、ハイスクールには行ってないのよ。だから、お金が貯まったら学校に戻りたいの。それでバーで働いているの」
私がアンヘレスで出会ったレイテ島出身のバーガールはそのように言った。英語は流暢だったが、英語が話せれば豊かになれるほど世の中は甘くできていない。
大学卒の人間でも満足に仕事がなく、正社員にもなれない社会で学歴のない人間が満足に仕事が得られるわけではない。国全体が貧しいというのは、そういうことだ。
フィリピンは小学生で全体の30%が途中で退学する。そして中学生に進学するのは50%。大学に行けるのは10%。なぜこんなに低いのか。その多くは貧困が理由だ。
ではフィリピンの小学校の授業料はいくらなのか。無償だ。無償なのになぜ経済的理由で学校に通えないのか。制服代や教科書代はタダではないからだ。
フィリピンでは子供も親の仕事を手伝ったりして働いている。教育は金が出ていくが、仕事を手伝わせたら金が入ってくる。そうであれば低所得の親が子供に学校へ行かせるより働いてもらおうと考えても不思議ではない。
こうした低所得層が国を覆い尽くせば国全体が貧しくなる。では、国を豊かにするためにはどうすればいいのか。国際競争力を付けるためには教育を促進するしかない。(鈴木傾城)