浪費をやめることによって得られるメリットや利点をしっかりと身につけておく

浪費をやめることによって得られるメリットや利点をしっかりと身につけておく

浪費に狂ってしまうと、警察官であっても泥棒と化して逮捕されてしまうようなことも起きる。浪費癖で人生を破滅させてしまうのは、この警察官だけではない。私の知り合いでも、浪費で人生を破滅させてしまった男女の顔が何人も思い浮かぶ。浪費の向こうに平穏な暮らしはない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

浪費癖で人生を崩壊させた巡査部長

2024年2月、福岡県警は自らの組織の一員である33歳の男性巡査部長を、窃盗容疑で福岡地方検察庁に書類送検していた。この事件は、法を守るべき立場にある警察官が起こした不祥事であり、福岡県警は世論の袋叩きに遭ったのが記憶に新しい。

飯塚警察署地域課に所属していたこの巡査部長は、交際していた2人の女性から貴金属などを盗みまくっていた。

被害は2023年の2月から3月、そして9月から10月にかけて発生した。30代の女性の自宅からはブランド品のバッグなど3点と貴金属など50点、40代の女性の自宅からはネックレスなど4点を盗み出したとされる。

それにしても、警察官ともあろう者がどうしてこんなことをしたのか。

すべては、巡査部長の浪費癖がもたらしたものだった。調べに対し、この巡査部長は「交際相手や友人との飲食代に浪費し、借金があった」と話している。

事件発覚後の調べによれば、特に高級レストランやバーでの出費が目立ち、友人や交際相手に対して経済的に余裕があるかのような振る舞いを続けていたという。しかし、裏では警察官としての給与では賄いきれないほど浪費していた。

結局、巡査部長はこの浪費を継続するために、盗んだ品々を質店に持ち込んではカネに変えていた。つき合っている女性の家から盗んで盗んで盗みまくっていたのだから、もはや職業は警察官というよりも泥棒だ。

福岡県警はそれでも温情があったようで、巡査部長に対し停職6か月の軽い懲戒処分を下している。だが、巡査部長は同日付で依願退職している。復職しても、もはや警察官としてはやっていけないと自ら判断したのだろう。

浪費癖で人生を破滅させてしまうのは、この男だけではない。私の知り合いでも、浪費で人生を破滅させてしまった男女の顔が何人も思い浮かぶ。

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浪費に引きずられると破綻する

消費者向け貸付残高は、2016年3月以降増加傾向に転じている。2009年3月から2023年3月のあいだに、消費者向け貸付残高は52.6%減少していたが、2016年3月以降は増加に転じている。

また、貸付残高全体も増加している。2020年から2021年にかけて27兆円から33兆円へと急増し、2024年にはふたたび40兆円を超える水準となっていた。さらに、2023年12月の調査によれば、消費者金融やカードローンを利用するユーザーの需要が、増加傾向にあることがあきらかになった。

過去に一度でも借り入れをしたことがあるユーザー層の62.7%が、現在も借り入れをおこなっている。これは2023年の同様の調査結果と比較して2.2%の増加である。

消費者金融系カードローンの実際の利用人数は、約713万人と推定されている(実際の消費者金融系カードローンの利用者数は1,070万人だが、平均利用件数が1.5件なので)。これは、カードローンを利用できる年齢層である20歳〜74歳の人口約8,529万人の約8.4%に相当する数字である。

消費者金融系カードローンの利用者がすべて浪費とはいえない。しかし、「浪費」に近いところにいるという推定はできる。約713万人がそうだというのは、けっこう大きな数字であると感じるはずだ。

浪費の背景には、消費社会の巧妙なマーケティング手法が存在している。分割払いの普及やリボ払いの仕組みが消費者に与える影響は計り知れない。リボ払いは一見すると月々の支払額が抑えられるため便利に見えるが、実際には高額な利息が発生する仕組みになっている。

その結果、多くの人が気づかないうちに多額の負債を抱えることになる。

スマートバンクの調査によれば、日本全国で発生する「無駄づかい」の総額のうち、約45.2%が計画性のない「無意識な消費」によるものであることがわかった。これは、衝動的な購買行動が浪費の主な要因であることを示している。

この浪費に引きずられると、徐々に生活が苦しくなっていく。それでも浪費がとめられないと、借金まみれとなり、最後には生活破綻に至る。生活破綻の結果、人のものを盗む人間も出てくる。彼らが逮捕されて、事件として報道される。平穏な暮らしは、もうそこにはない。

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それでも浪費がとめられない人がいる

私の知り合いの女性は、ブランド物を買い漁ってそれを自慢していたのだが、あるとき私に「お金を貸してください」といっていた。浪費しすぎてカネがなくなったのは聞かなくてもわかる話だった。私は即答で断った。

タイの歓楽街パタヤで歩いているとき、南アフリカからきたという白人の男からカネを貸してくれといきなりいわれたこともあった。酒と快楽で浪費してカネをなくしたのはあきらかだった。これも即答で断った。

浪費している人間にカネを貸しても、ただ浪費されるだけで何の意味もない。

浪費が問題なのは、生活の「持続可能性」を損なう点にある。個人の浪費は、収入と支出のバランスを崩し、最終的には経済的破綻を招く。精神的なストレスも膨れ上がり、家族関係も悪化し、さらには健康問題にまで影響を及ぼす。

そして、浪費は社会的な信用を失う原因ともなる。クレジットカードの支払遅延や借金の未返済は、個人の信用スコアに悪影響を与える。これにより、住宅ローンや自動車ローンの審査に通らなくなるなど、人生の重要な局面で大きな障害となる。

しかし、それでも浪費がとめられない人がいる。

一般的には、感情に左右されやすく、ストレスや不安を感じたときに衝動的な購買行動をとる人が浪費で追いつめられる傾向にある。彼らは「カネを使うこと」で気持ちを満たす。この一時的な満足感は、ドラッグのように癖になるのだ。

往々にして計画性も欠如している性格のため、自身の収入や支出のバランスを把握しておらず、予算を決めずに買い物をする結果、必要以上に消費してしまう。

さらに、他人との比較や流行への執着や見栄も浪費の一因となる。金融リテラシーのしっかりした人は、見栄なんか張っても何の得にもならないとわかっているのだが、金融リテラシーのない人間が見栄をはると、悲惨な結果しか生まない。

冒頭に書いた巡査部長も、見栄を張って自滅している。こうした人々は自身の消費行動に無意識であり、だからこそ浪費をとめられなくなってしまう。現代社会は、大量生産と大量消費を基盤とした経済システムなので、このあたりに無自覚でいると、どんどん「消費させられてしまう」傾向にある。

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浪費をやめるメリットは、多岐に渡る

私自身は、何をどうしても浪費がやめられない人が、世の中にいるというのは理解している。変化する努力をする以外に救われる道はないのだが、変化ができないのであれば、この資本主義社会の中では自滅していくしかない。

しかし、金融リテラシーを身につければ、浪費をやめられる人もいる。そういう人は、浪費をやめることによって得られるメリットや利点をしっかりと身につけておくのがいいのかもしれない。

浪費をやめるメリットは、多岐に渡る。

経済的な安定を手に入れることができるし、将来の目標に向けた貯蓄もすることが可能になる。精神的な余裕が生まれるし、不必要なストレスや後悔を減らせる。そして、浪費をやめることによって、本当に必要なものを買うことができる。

それだけでなく、生活が落ち着き、持続可能なライフスタイルを実現できる。それによって、人間関係においての信頼を築くこともできる。本当に大切な価値観に基づいた生活もできるようになる。当然だが、借金や金銭トラブルを回避できるし、緊急時の出費に備えられる。

こうしたメリットが実感できるようになればなるほど、浪費の馬鹿らしさがわかってくるようになる。

そして、浪費の馬鹿らしさがわかってくれば、自ずと浪費を防ぐために「計画性」が必要になることや、「欲しいもの」と「必要なもの」を明確に区別する必要があることや、無駄づかいを誘発する環境を排除することなどもわかってくるはずだ。

浪費は避けられない行為ではない。浪費をやめるメリットを理解し、それを防ぐために行動することで、生きかたを転換することができる。

生活破綻してから人生を立て直すよりも、最初から破綻しないように浪費をやめておいたほうがラクに生きられる。浪費するよりも、他のことをして楽しんでいたほうがよっぽどいい。したたかでないと、生き残れない。

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