イランでは「服装警察」と呼ばれる当局があり、女性の服装について非常に厳しい規則を敷いている。特に髪を隠すヒジャブの着用は義務とされ、わずかにでも髪が露出していると罰則の対象になることがある。
彼らは公共の場や街頭で女性の着衣を監視し、規範に従っていないと判断すれば、その場で「指導」がおこなわれる。指導は勧告にとどまらず、しばしば罰金や拘留といった厳格な処罰に至ることも少なくない。
2022年には、20代の女性マフサ・アミニがこの服装警察によって拘束されたあとに死亡し、イラン国内で大規模な抗議運動を引き起こしたこともあった。(ブラックアジア:髪が見えたら殺される国。父親に逆らったら殺される国。なぜそうなったのか?)
最近、首都テヘランにあるイスラム・アザド大学の科学・研究部門の歩道で、この厳しすぎるヒジャブ着用に抗議するために、ひとりの女性が服を脱いだ。彼女は下着姿で歩道をゆっくりと歩き、それから階段のところに座った。
そのあと、彼女は服装警察に拘束されて連れていかれた。彼女は「精神病院」に搬送されたという。
民主主義国家では女性がどんな服装をしていようが、だいたいは好きにできるのだが、イランのような厳格な国家では女性が自らの意志でファッションを楽しむことは許されない。
イランは民主国家ではない。イスラム教の教義に基づく神権政治国家である。政府は女性の服装を厳しく管理することで、国民全体に対する規律や支配を強化し、宗教的な価値観を保持しようとしている。
ファッションや個人のスタイルは自己表現の手段であり、ときに政治的なメッセージも含まれる。そのため、イランのような抑圧的な体制下では、個人のスタイルはしばしば「不穏分子」として見なされるのだ。
彼女は、それに大きな閉塞感を感じていたのだと思う。