アメリカのドル高は全世界の貧困層を苦境に陥れている。フィリピンでも2022年10月の消費者物価指数(CPI)は7.7%に上昇し、ただでさえコロナ禍でダメージを受けていた貧困層がますます追い込まれて「このままでは死んでしまう!」と悲鳴を上げている。
フィリピンの法律では一日の最低保証賃金は400ペソ(約826円)である。「一時間」ではない。「一日」だ。しかし、この法律は「あってなきがごとし」であり、実際にはフィリピンの貧困層は、一日400円から500円をやっとのことで稼いで生きている。
しかし、それでも仕事があるだけマシで、仕事が見付からないでストリートをさまよっている人も大勢いる。フィリピン統計局によると、2021年の段階でも350万世帯、1999万人が極度の貧困の中にいると報告を出している。
フィリピンの失業率は5%から6%で推移している。そして、この失業者の60%近くが男性となっている。そして失業した男性の約78.4%は15歳から34歳が占めていた。
つまり、フィリピンでは「働き盛り」の男たちが働いていない。もともとフィリピンは超学歴社会であり、高卒以下はまともな仕事などない。一生懸命に働いたら評価されて上に行くようなシステムもない。
学歴のない人間は正社員になれず、終身雇用もなく、労働者は使い捨てである。契約は数ヶ月ごとなので、仕事を得てもすぐに解雇される。
もともとフィリピン人は根を詰めて働くような性格ではなく「明日のことは明日考えればいい」という楽天的な人たちが多いのはよく知られている。熱帯性気候の人々は、日本人のようにあくせく働かない。
そうした要因が重なり合い、フィリピンの貧困層は社会的な不況には脆弱だ。2023年はアメリカの利上げを起因とした深刻な景気後退《リセッション》が全世界を覆い尽くす。2023年はフィリピンの貧困層はますます厳しい状況に追いやられるだろう。
フィリピンのエコノミストたちは「今後さらに困難な時期を迎えるので、政府は包括的な対応をすべきだ」と激しく警鐘を鳴らしているのだが、政府は相変わらず貧困に対して無力である。フィリピンは、どうなってしまうのか……。