2022年7月、財務省は「1カ月当たり80万円を超える高額な医療費が発生した場合、その一部を国が負担する」という国民健康保険の高額医療費負担金を廃止し、国ではなく都道府県が負担をすべきだ、という提言を出している。
高額療養費制度をなくしてしまうための準備に入ったのではないかと噂されている。日本政府はかねてから社会保障費の増大を何とか食い止めたいと思っているのだが、高額療養費を払わないことによって費用を削減することができる。
高額医療がかかったら「国民は都道府県に泣きつくか、保険に泣きつくか、さもなくば医療を受けるな」という話につながっていく可能性はゼロではないということだ。こうした動きを見て、このように言った人もいる。
「いよいよ〝金がないヤツは死ね〟が始まったのかも……」
そうかもしれない。すでに病院では金持ちや高額な保険料を払える人が個室や好待遇の病院や医療を受けて、そうでない人は相部屋の病室を使うのは当たり前になっている。今後は、受けられる医療もあからさまに違ってきても不思議ではない。
HIV/AIDSで起きている現状のように……。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染すると、やがてエイズを発症させる。しかし、感染してすぐにエイズを発症するわけではないので、エイズを発症する前に「それを抑える」ことができれば、生き続けることが可能になる。
これを可能にするのが「ART」と呼ばれる治療法なのだが、これは抗ウイルス薬の混合物を一生飲み続けるものだ。今はこのARTをきちんと受けることによって生き残ることが可能になっているのである。
ところが、ARTを受けず、HIV感染から死に至る人々は全世界で100万人近く存在する。
特に途上国がそうなのだが、そのその理由はただ1つ……。肝心なARTが経済的な理由でできないからである。〝金がないヤツは死ね〟は、別に珍しくも何ともない。それが世界の現実なのである。