2022年7月8日。安倍晋三元首相(67)が狙撃されて殺されるという衝撃的な事件が起こっている。戦後で最長の8年8ヶ月にも及ぶ長期政権を担った首相であり、求心力を持った首相でもあった。
犯人は山上徹也という41歳の男なのだが、今の段階ではこの男の背景や政治信条や思想はどのようなものなのかよく分からないので、ここには触れないようにしたい。
しかしながら、こうした政治テロは日本ではほとんど起こらないので、すべての日本人にとっては衝撃的な事件であるのは間違いない。時間が経てば経つほど、この衝撃的事件が日本社会に落とす影は深くなっていくのだと思う。
安倍首相は首相を降りた後は自民党の中の最大勢力の派閥である清和会を安倍派として仕切っていた中心人物であり、こうした人物が突如として喪失してしまった場合、求心力を失った清和会は再編成を余儀なくされることになる。
最初は死してなお安倍晋三氏の影響力が残っていて組織の結束が図られるのだろうが、それは長く続かないので、半年もしたら徐々に結束力が弱っていく可能性が高い。すると、自民党内の保守グループが漂流していく可能性もある。
保守の牙城が崩れていくのだから、自民党も内部から変質していってもおかしくない。
また山上徹也の政治的信条や思想が明るみになるにつれて、彼の憎んでいたもの(特定の宗教団体ということだが……)や、彼を支えていた思想に対する反発もあれば、場合によっては共鳴も起こり得るはずだ。
そして、「日本でも政治的テロが起こった」という事実が、何か不穏なものを社会に広げていく可能性もある。思えば日本が激しい貧困と格差に揺れ動いていた1920年代も、「こんなひどい時代にしたのは政治が悪い」と要人暗殺が起こったこともあった。
その後、日本は戦争に邁進していくのだが、暗殺事件の余波というのは時代を変えるきっかけになっていくのである。
今回は、どうなのだろうか……。