来年死ぬわけではないので長期戦略に相応しい生き方を選択しないと長持ちしない

来年死ぬわけではないので長期戦略に相応しい生き方を選択しないと長持ちしない

裏切る相手と一緒にいられるのは短い間である。その短い間でも危険なのだ。そのため、仲間を決して裏切らないことを証明した人間が、リーダーにふさわしい人間として成り上がっていく。「仁義を貫く」という言葉もあるが、その意味するところは「騙さないで筋を通す」ということである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

仲間内では裏切りは絶対に許さないという掟が存在する

『仁義なき戦い』シリーズをはじめとしたヤクザ映画で不動の地位を築いた俳優・菅原文太は「ヤクザには良いヤクザと悪いヤクザがいて、良いヤクザというのは任侠をしっかりと守るヤクザ」という持論を持っていた。

任侠というのは「弱きを助け強きを挫く」という姿勢を指す。こうした任侠道を極めたヤクザはカタギに迷惑をかけず関わらず、自分たちの世界で生きていく。

裏社会の人間たちは、法を守らないアウトサイダーの集団なので、普通の人たちから見ると、裏切りと策略と暴力と騙しが最もうまい人間がのし上がるようなイメージがある。

しかし実際には、裏社会でも頭角を現して「長く」生き残るのは、裏切らない、誠実、騙さないを信条にした人物である。そうした人物は仲間を守り、約束を守り、決して裏切らず、表社会の人間よりも情に厚い。

裏社会では、表社会よりも厳しい環境に置かれているので、むしろ表社会よりも強い結束があり、その結束のために仲間内では裏切りは絶対に許さないという掟が存在する。裏切りを放置していると組織も個人も長期で維持できないからだ。

裏切る相手と一緒にいられるのは短い間である。その短い間でも危険なのだ。

そのため、仲間を決して裏切らないことを証明した人間が、リーダーにふさわしい人間として成り上がっていく。「仁義を貫く」という言葉もあるが、その意味するところは「約束を守る」「騙さないで筋を通す」ということである。

もちろん現実はドロドロしており、人間は私利私欲でまみれているので、筋を通した人間が逆に馬鹿を見ることも多い。そうした人間関係の対立はどうしても避けられないものがある。しかし、基本は変わらない。

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信頼できる人間で脇を固めるというのは最優先事項

約束を守っても、信頼を裏切らなくても、相手が約束を破り、相手が裏切ってくる。だからそこで人間関係が悪化し、壊れ、対立したり衝突したりすることになる。しかし、まわりの人は裏切らない人に付くので、「長い目」で見ると約束や信頼を守る側が最後に生き残る。

表社会でも「約束を守る、時間を守る、騙さない」というのは長期で成功する上でとても大切な要素だが、裏社会でもそうだったのである。

むしろ裏社会であればあるほど、自分たちの所属する社会に対しては、絶対に「約束を守る、騙さない」ことが求められている。もともと彼らは法の埒外にあるので、仲間の裏切りで自分が刑務所に長期拘束されたり、殺されたりする危険が高い。

仲間の裏切りは一瞬に組織を瓦解させる。「長く」持たない。だから仲間内では絶対的に信頼できる人間で脇を固めるというのは最優先事項である。

サウザンプトン大学のエリザベス・シェル教授は、起業家の育成や研究に関わっている人だが、成功する企業家の資質として、必死に働くの次に、このような項目を起業家本人が挙げていることを報告している。

「正直で信頼される人でいること」

事業は長期で取り組むべきものだ。事業を成功させ、資金の提供を受け、「長く」ビジネスを続けていくためには、起業家は自分自身が正直で信頼される人でいることが大切だと考えている。仕事を楽しむことが成功の第3の資質として挙げられており、第4の資質にまた似たような項目が上がっている。

「人々と良好な関係を持つこと」

起業家と言えば猛烈な拝金主義者で、金を稼ぐためには裏切りでも詐欺でも辞さないのかと言えばまったくそうではない。そういう起業家もいるが、裏切りでも詐欺でも辞さない起業家は長期で活躍できない。それは短期では通用するが長期では通用しない生き方だからである。

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どこの世界に入っても、そこで生き残るための方法論

メディア的には「金こそすべて」で他人を踏みにじりながらのし上がっていく人間、他人を踏みにじりながらのし上がる人間はとても鮮烈に映り、こういった人間たちが大きくクローズアップされる。

あるいは狡猾で、信用ならない人間が、まわりの人間を次々と破滅させながら巨大な成功をつかみ取るというのが、あたかもアンダーグラウンドの成功方式のように示されていることもある。

そのため、まるで悪人にならなければ、成功しないような感覚になることもある。しかし実態はそうではないことを、すべての集団のあり方から見て取れる。どこの世界でも「信頼」や「筋」をきちんと通せる人間でないと「長期」でやっていけないのである。

そんな話は常識を持っていれば当たり前の話でもあるが、現代社会ではあまりにも悪人礼賛が強いので、当たり前が当たり前に見えないのだ。それで、道を誤ってしまうのである。

どこの世界でも、「裏切らない、誠実、信頼重視」ができている人間が、最終的には評価される。そして、その世界で「長く」生きていけるようになる。

いかに他人をスマートに裏切るのかが重要ではなく、いかに他人と深い信頼関係が結べるのかが大切なのだ。これは、道徳の話をしているのではない。どこの世界に入っても、そこで長く生き残るための方法論の話をしている。

すべての世界でこの方法論が通用し、しかもいつの時代でもそれが重要視されているということは、これが生きる上での不変の原理原則であることが分かるはずだ。

法則というのは、時代が変わろうが、場所が変わろうが、決して廃れることはない。言葉を変え、伝え方が変わっても、時代を通して継承されていく。

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最後に生き残るのは昔から言われている原理原則

私たちは来年や再来年に死ぬわけではない。とすれば、生き方も長期戦略に相応しいものを選択しないと長持ちしない。

私たちがどこの世界で生きているにせよ、その長期戦略の生き様は「裏切らない、誠実、信頼重視」を追求することしかないのは自明の理だ。こうした生き方の効果は長期になればなるほど効果を発揮する。

つまり、この生き方は長期戦略として取り組むべき生き方である。

信頼は短期では推し量れない。だから、この生き方は短期では効力を発揮しない。しかし誠実であることを継続していけば、長期ではちょっとやそっとでは壊れない人間関係となって結実するのである。

逆に自分が評価する相手も「信頼できる、誠実である」という点を重視して長期で評価していけば、トラブルに巻き込まれる確率も減るばかりか、困難な局面では助けられることすらもあるはずだ。

今の世の中は、目立つためにわざと常識に反する奇抜な人生訓や、小賢しい策略や、表面だけ取り繕うような指南書が大きく喧伝されて、その新規性や珍妙さによって話題になったり流行になったりする。

しかし、珍妙な説はその場限りの短期戦略なので長期では泡のように消えていく。

そして、結局は「信頼」や「誠実」のような、誰もが知っている原理原則に戻っていくのである。個人でも企業でもそこから外れていくと、それが原因になってうまくいかなくなってしまう。

裏切る人間、騙す人間、不誠実な人間の生き方がうまくいくのは短期だ。その時点ではうまくやっているように見えても、長い目で見るとそれなりの報復が後で待っている。長期になると、その生き方に復讐される。

人間は数年以内に死ぬよりもっと長く生きる確率が高いので、表社会でも「信頼」を重視し、裏社会でも「仁義」を通すという当たり前を実践する人間が、長期で見ると生き残るということが分かってくる。

当たり前のことを間違っていると断言し、世間の感覚とは反するものがちやほやされる現代の風潮は短期戦略でしかない。

それは危うく見える。炎上して売れれば何でもいいという「マスコミや企業の都合」でしかない。昔から言われている原理原則を追求することが結局は最後に生き残る。長く生き残って最後まで立っている確率が高い。

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