売春地帯は資本主義の縮図だ。すべては金が物を言う。
金を持っていると、老いていても、性格が悪くても、見てくれが最悪でも、そんものは何の問題もない。金で、そこにいる女性を片っ端から手に入れることが可能になる。例外はない。
その代わり、金を失うと何も手に入れることができない。
その人がどんなに礼儀正しく、優しく、心が純粋であって、美男であっても、金がなければ、見事なまでに、まったく誰からも相手にされない。
この現象を見ると、売春地帯の主人公は、男でも女でもなく、金であることが分かってくる。だから、男も女も金を巡って激しいぶつかり合いをする。
このような世界を観察していると、「買えないもの」は何だろうかと、逆にそちらの方に関心が浮かんで来ることもある。
いつだったか、ひとりでベッドに寝そべりながら、何が買えないのかをずっと考えていたとき、ふと、女性の「心」はどうなのかと思ったことがあった。