シャキーラ。アフリカから来た陽気な酔っ払いの売春女性

シャキーラ。アフリカから来た陽気な酔っ払いの売春女性

二〇一四年。久しぶりにタイの首都バンコクの夜をさまよい歩いていると、ちょうどソイ・アソークは反タクシン派に道路封鎖されて、大勢の人々が気炎を上げているところだった。

ソイ・アソークと言えば売春ストリートであるソイ・カウボーイが近くにあるので寄ってみると、ほとんど客がおらず閑散としていた。

女性たちが店に誘うが、あまり惹かれることもなく、様子だけを見てからすぐにそこを抜けて、今度は歩いてナナまで行ってみる。淫靡《いんび》な歓楽地であるナナ・プラザも久しぶりだったが、やはり一周してすぐに関心を失ってそこを抜けた。

かつてタイの売春地帯にいたときの高揚感はもはや私の心の中にはまったく存在しなかった。私は自分の心境に戸惑い、いったいどうしてしまったのだろうかと自分をいぶかった。思い当たる点はいくつかあった。ひとつは、小さな恐怖があった。

もう私はあまりにもタイ売春地帯には長くなっている。どんな体験をしても、過去に似た体験を持つ。それが恐怖だった。これ以上の体験は、過去の女性の大切な想い出をみんな「上書き」して消えてしまうのではないかという恐怖が強くなっている。

もう、ずいぶん昔から、すでに私の過去の記憶は薄らいできており、複数の想い出が輻輳《ふくそう》してしまって、きちんと想い出すことができなくなっている。

そんなところに、新しい体験をすると、どうしても過去の体験が消えたり、上書きされていく。しっかりと想い出せなくなってしまうのである。それが私には怖かった。

もうひとつは……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア』。本編に収録できなかった「はぐれコンテンツ」を掲載。電子書籍にて全文をお読み下さい)

ブラックアジア外伝2
『ブラックアジア外伝2 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

ブラックアジア書籍カテゴリの最新記事