◆フラッシュバックの心地良さと陶酔感。私は抜け出せない

◆フラッシュバックの心地良さと陶酔感。私は抜け出せない

いつだったか、タイ・バンコクの歓楽街パッポンで知り合ったある女性に、私は「明日、日本に帰るよ」と何気なく言ったことがあった。すると、彼女はうなずきながら、私にこのように尋ねた。

「今度、いつ戻って来るの?」

それは、とても自然な口調だったので、そのときは何とも思わなかったのだが、ふと考えると、なぜ彼女は私がまたバンコクに戻るはずだと知っているのだろうと不思議になった。

歓楽街に堕ちた男は、そこから抜け出しても、また歓楽街に戻っていくということを、彼女は体験的に知っていたのかもしれない。逆に私もまた彼女が歓楽街パッポンから抜けると言っても、同じように言ったかもしれない。

「今度、いつ歓楽街に戻ってくるの?」

東南アジアの歓楽街は、他の都市のそれとはまったく違う。特にタイの歓楽街はそうだ。一度飲み込まれたら、男は死ぬまでそこを反復しなければならないような、そんな蟻地獄である。私も、そんな世界に堕ちた。今でも、「フラッシュバック」が脳裏で起きる。

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