昔のバンコクは思い出深いし、とても好きだった。東南アジアのこの大都市は、私にとって冒険しても冒険しても尽きないワンダーランドのように思えた。
しかし、時間の決められた目的地があると、このワンダーランドは途端に魔都と化す。高架鉄道BTS(スカイトレイン)ができる2000年頃まで、バンコク市内で行きたいところに行くというのは大変だったのだ。
私はヤワラーやシーロムあたりにいることが多かったが、そこからタクシーやトゥクトゥクを使わないで、チャトゥチャックに行こうとか、エカマイに行こうと思ったら、バスを乗り継がなければならない。
そのバスが難問で、タイ人に聞きながら番号付きのバスに乗るのだが、いったいどこに向かっているのか、どこで降りて良いのか、まったく分からないのである。
当時のバスは、確か3バーツほどだったような気がするが、タクシーはどこに行くにも100バーツを超える。時間も暇もたっぷりあるのだから、ローカル・バスに挑戦するのだが、たいていは目的地に着けずに、半日仕事になった。