「女で身を滅ぼす」のは世間の恥さらしだ。しかし、私自身はいつか「女で身を滅ぼす」という予感を感じている。その思いはすでに売春地帯に行かなくなった今も変わらない。
愛と性の日々は人を堕落させるのに十分な魔力を兼ね備えており、女性の熱い柔肌に勝てる男はどこにもいない。優しい女は危険だ。男はやがてその優しさから逃れられなくなる。
武藤毅(むとう・たけし)という58歳の男もまたそうだったのだろう。
この男は製薬会社「龍角散」のマーケティング部長だったのだが、都内の飲食店で知り合ったタイ女性の魔力にハマり、会社の金を総額約8800万円を詐取したのだという。
その手口は「架空発注」だ。取引先の広告制作会社社長と共謀し、広告を依頼したことにして金を自分にバックさせて、その金を自分の懐に入れていた。
こうした詐取行為は2005年から始まっていたという。
龍角散が詐欺容疑で訴え出たのは2012年から2013年までの7ヶ月間分の広告費詐取である。
同社はこの7ヶ月に7回の発注を行って2000万円を支払っていたということなので、1回の広告費で約285万円だったことになる。武藤毅容疑者は、この285万円を10年近く盗んでいた。