郷愁とはいったい何歳から感じるものなのだろうか。人はいつから想い出を大切にするようになるのだろうか。
「懐かしい……」
そんな気持ちを私が強く感じたのを今でも強いインパクトとして覚えているのは、20歳の頃にタイに初めて足を踏み入れたときのことだった。
バンコクは日本とはまったく違う「異国」だったにも関わらず、街の中でふと見る建物や人々や景色に、私は懐かしいという気持ちが抑えられなかった。
タイの郊外に向かって、その感はますます強くなった。
熱帯の水田の光景や、田舎の食堂や、粗末なホテルの部屋。何気ない光景に、私が子供の頃のかすかにある記憶のようなものがひとつひとつ蘇った。
「日本も昔はこうだったな……」
そう思うと、まるで自分が過去にタイムスリップしたような気持ちになった。