郷愁

◆確実に会えないことが確定した段階で、甘い思い出は甘酸っぱい思い出になる

真夜中にひとりで寝ていると、いつも私は若い頃に知り合った女性たちのことを思い出したり、忘れてしまった彼女たちの顔を思い出そうとしたり、何気ない会話なんかを思い出そうとしたりしている。 最近はひとつ収穫があった。タイの首都バンコクにある歓楽街パッポンに近いホテルで一緒に過ごした女性のことを思い出したのだ。何十年も忘れていた女性だ。一度、思い出してしまうと、今度は「なんでこんな特徴的な女性を忘れていた […]

◆「お前は売春地帯にのめり込んだ人間なんだから死ぬまで逃さないよ」

誰もが過去を振り返ると、自分が幼かった頃、若かった頃の光景を思い出して懐かしく思うはずだ。甘酸っぱかったり、悲しかったり、恵まれなかった時代であったとしても、昔の想い出は郷愁となって胸がいっぱいになるはずだ。 最近、ふとニーノ・ロータの『太陽がいっぱい(Plein Soleil)』が聞きたくなって、YouTubeで検索したら、アラン・ドロンやマリー・ラフォレが出てきて懐かしさにいっぱいになって音楽 […]

自分を取り戻す方法。「過去のドアを開ける鍵」はどこにあるのか?

ボブ・ディランの『時代は変わる(The Times they are a changin’)』という歌で、このような一節がある。 「あなたは、泳ぎ始めた方がいい。そうしないと石のように沈んでしまうだろう。時代は変わって行くのだから」 時代は常に変わっていく。それは止められない。昨日と今日はまるで同じ一日に思えるのだが、それでも10年前と今日では確かに時代が違っていることを私たちは振り返 […]

◆その瞬間は短い時間であっても振り返ると永遠の時間になる

あくまでも私自身の感覚だが、時間的余裕のある時期と、余裕のない時期では、時間を捉える心理的感覚が違う。これは、ずっと昔に気付いたことだった。 たとえば、「時は流れる」という言葉がある。 この言葉は、自分の人生をゆっくりと振り返り、過去に想いを馳せ、懐かしい顔をひとりひとり思い出すことのできる時間的余裕のある時だけに感じることができる。 しかし、時間的余裕がまったくなくて、日々を生きるのに精一杯で過 […]

◆「発展の取りこぼし」が路地裏にたくさんあることの幸せ

海外に向かうと、その国の代表する都市や観光地よりも、名も知らない郊外や、何気ない普通の住宅地や、発展から取り残された一角に関心を持つ人もいる。 華やかな場所は世界中どこでも似通ってくる。高層建築物もショッピングモールもテナントも、今や世界中どこでも同じようなものになっている。 しかし、そこから一歩でも路地裏に潜り込んでいくと、急にその国独特の姿が顔を現すことになる。 路地は観光客のために存在してい […]

◆郷愁を想う。その人に惹かれたという気持ちを忘れたくない

郷愁とはいったい何歳から感じるものなのだろうか。人はいつから想い出を大切にするようになるのだろうか。 「懐かしい……」 そんな気持ちを私が強く感じたのを今でも強いインパクトとして覚えているのは、20歳の頃にタイに初めて足を踏み入れたときのことだった。 バンコクは日本とはまったく違う「異国」だったにも関わらず、街の中でふと見る建物や人々や景色に、私は懐かしいという気持ちが抑えられなかった。 タイの郊 […]

◆取り残され、やがて消えゆく上海の古い町並みに郷愁を感じる

日本でも地方には古い町並みが残されていることがある。たまにそういったところを歩くと、郷愁を覚えたり、子供だった頃のことを思い出したりすることも多い。 古い町並みには、その雑然としたものが醸し出す何か不思議な雰囲気があって、それは多くの人を惹きつける。 古い町工場の油の音、八百屋の店員の声、駄菓子屋の毒々しい色をしたお菓子、下町の長屋から漂う夕食の匂い、子供の泣き声、狭くて雑然とした路地裏……。 当 […]

◆深い郷愁を感じさせるカンボジアは、私にとって常に特別な国

私が「アジア」と言ったとき、私の中にあるのは「東南アジア」のことだ。生まれて初めて海外に出て、生まれて初めて放浪した大地は、まさに東南アジアだった。 私はバンコクを抜けてタイを南に下っていき、現在は独立闘争で揺れているタイのヤラー県をさまよい歩いて、東南アジアの豊穣に感銘を受けていた。 あれから私の行動範囲はとても広がって、一時はメキシコにまで惹かれたこともあったが、ふと気がつくと東南アジアが懐か […]

◆安酒メコン・ウイスキーとビアチャーンと、パタヤへの郷愁

タイ・パタヤは退廃の街だが、退廃にどっぷり堕ちてしまうと、この街を去ったときに、その退廃が忘れがたくて身もだえしそうになる。酔った男たちの咆哮ですら懐かしく思い出すのだから重症だ。 パタヤとは、多くの人に、そのような「習慣性郷愁症候群」を生み出す街である。 しかし、私はもう「元」放浪者の仲間入りだし、自分の体力を考えると、今後は退廃的な世界に沈没できるかどうかも分からない。 そうなると、パタヤの退 […]

◆消え去っていく想い出。あなただけが見ることのできるもの

指から砂がこぼれ落ちていくように想い出が消え去っていく。過去を懐かしく思い出し、一緒に笑みを浮かべて見つめ合った女たちの姿があったはずなのに、その想い出が記憶から抜け落ちていく。 それがたまらなく寂しく悲しい。 懐かしい日々を思い出すことは誰にでもある。過ぎ去った子供時代、昔の友達と遊び回ったこと、まだ若かった両親、初めての好きになった人のこと。 コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 […]