タイ・バンコクの歓楽街には無数のゴーゴーバーがある。そこで出会ったひとりの女性と一緒にいる時、彼女は「自分の生んだ子供がかわいくない」「子供は死ねばいいと思ってる」と、さらりと私に言った。
「本気なの?」と私が言うと、彼女は屈託なく”100%, Yes!”(100%、そうよ)と答えた。
そんな母親も中にはいる。そんなことくらいは私も知っていたが、率直にそのように言う女性を前にして、私は居心地の悪いものを感じた。
タイの歓楽街には男をカモにしようとする小悪魔な女たちも多い。(ブラックアジア:小悪魔のワナ。数を撃てば当たる戦略からラブレター本まで)
彼女の「危険さ」はそうしたタイプとは違った。私とは感受性がかなり違っていて、それが危険に思えたのだ。
彼女は美しい女性だった。私のことを好きだとも言ってくれた。彼女は私に対しては優しかった。そして、一緒にいる時間は決して緊張をはらむものでもなかった。逆に甘美だったかもしれない。
しかし、私は「子供は死ねばいいと思ってる」という彼女とはロングの予定だったところをショートで別れ、ほっとして夜の雑踏を歩いたのだった。たまに、こうした女性と出会うことがある。感受性が違う女性と……。(鈴木傾城)