ジョルジュ・バタイユというフランスの作家は『眼球譚』や『マダム・エドワルダ』というエロチシズムを極めた作品で後に有名になった人物だ。
その作品は、性を弄ぶことによって他人を精神錯乱に追い込んでいく異常な世界を描写しており、エロチックではあるものの、異様なまでに道徳を踏みにじることに力点が置かれた奇怪な小説であると言える。バタイユはこれを偽名で出版した。
ジョルジュ・バタイユ本人は至って品行方正な人物のように思われていた。実際、彼は国立国家図書館の館員を表の仕事としており、洗練された紳士としてまわりから認識されていた。
しかし、ジョルジュ・バタイユは二面性があった。
彼は表側の仕事を洗練された物腰で忠実にこなしながら、真夜中になると売春地帯に繰り出して退廃した娼婦たちと変態行為に耽るのを日常としていたのだった。
それが彼の流儀だった。善と悪、紳士と変態、禁欲と堕落の二面性を彼は意図的に自分の中に取り入れ、裏と表の自分を交互に入れ替えて生きていた。
しかし、元々そうではなかった。ジョルジュ・バタイユの二面性はいかにして作られていったのか。