世の中には「昼と夜、陰と陽、表と裏」があるように、セックスもまた誰もが感じる表側のセックスと、踏み入ってはいけない裏側のセックスがある。
表側のセックス。裏側のセックス……。多くの人が味わうのは、表側のセックスだけだ。表側のセックスとは、リラックスして心地良い時に感じるものである。
愛があって、優しさがあって、互いに互いを理解しあってひとつに溶け込むような快楽。それが「表側の快楽」だとしたら、それとはまったく性質が違う「裏側の快楽」もある。
愛も優しさもない。思いやりもない。暴力的で、荒んでいて、肉体がさいなまれて、屈辱的で、場合によっては憎悪が含まれるのに、それでいて激しい快楽を感じる。
そして世の中には莫大な数の異常があるように、異常なセックスもまた莫大に存在する。ボンデージ、首絞め、イラマチオ等の強制的性行為……。
ほとんどの場合は理解不能として表側から忌避され、その快楽を進んで味わおうとする人はいない。だから、その快楽はどこから生まれてきているのか、まるで分からない。
私も長く分からなかったが、期せずして荒廃の中から生まれてくる危険な快楽の正体を知ったことがあった。愛が快楽を生み出すのと同様に、危険や憎悪もまた快楽を生み出していたのだ。どういうことか……。