ここ10年、アメリカでは異様なまでに臀部《ヒップ》が大きな体型がずっと持てはやされてきた。
これは、言うまでもなくキム・カーダシアンの影響が大きくて、マスコミが彼女を持てはやせば持てはやすほど、整形手術で彼女のようなヒップを手に入れたいという女性たちで溢れていった。
興味深いことに、東アジア圏の女性にはこの流行はまったく入って来なかったので、欧米や南米の流行のみに留まっていたのだが、この流行に巻き込まれた女性たちはヒップ増大手術を望む女性が続出して社会問題化した。
美容整形と言えば普通に考えれば誰もに好かれる容姿にするのが最大の目的だったはずなのだが、最近は必ずしもそうではない。女性は「自分が良いと思う容姿」を目指すようになっていて、他人が良いかどうかは二の次になりつつある。
女性がどのようなものが良いと思うのかはそれぞれなのだが、「こうなりたい」と思う女性の理想は往々にして行き過ぎていく。
たとえば、胸を大きくしたいという女性は、普通に大きいだけにすればいいのだが、大きいのが理想なので、「大きければ大きいほど良い」と考える傾向がある。そのため、まるでマンガか何かのように異常なまでの巨大乳房にしてしまう。
あるいはアンジェリーナ・ジョリーのような厚い唇が良いと持てはやされるようになると、まるでソーセージをふたつくっつけたような異様なまでに分厚い唇にしたりする。理想に思うあまり、極端に走ってしまうのだ。
巨大なヒップもまたそのひとつであり、女性たちの身体が見るからに「異形化」していったのだった。