鬱蒼と茂った近くの山をゆっくりと登っていると、すっかり体力を失っていることを自覚せずにはいられない。
急勾配では心臓が破れそうで、坂を下るときは疲労で足が小刻みに震える。休み休みでないと身動きできない。
もともと麓にも人がいないのに、山の中であればなおさら人の姿もない。一心不乱に鳴く蝉の声にすべてが消されて、人のいない自然の豊穣さに圧倒される。
過疎の村や、本当に人ひとりもいない山の中で佇んでいると、人口が減って衰退していく日本の地方や、高齢化や、変わって行くものや、変わらないもの、そして社会や人のあり方等、いろんなことを思う。
高齢化が進み、人口が減るというのは、都会にいたら絶対に気がつかない。なぜなら、人が減れば減るほど、逆に人は都会に集まっていくようになるからだ。
相変わらず人は多いように見えて、少子化や人口減はどこの世界の話だろうと感じる。しかし、都会の人間がそうやって何も気付かないうちに、地方が朽ちているのである。