年齢がいけばいくほど「クスリは身体に悪い」という考え方が身体に悪くなる

年齢がいけばいくほど「クスリは身体に悪い」という考え方が身体に悪くなる

以前、私は激しい頭痛やめまいに苦しんだのだが、あの頃は鎮痛剤が手放せなかった。鎮痛剤の威力には感銘を受けた。製薬会社には本当に命を助けられた。クスリを頭から拒絶するのは間違いだし危険だ。年齢がいけばいくほど、クスリを受け入れた方が利点が多い。健康寿命も延びる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

下手に医師にかかったら長生きさせられるかもしれない

先日、フローリングの床にジョイントマットを敷く作業をしていて、ジョイントマットを切断するための鋭利で特別な鋏《シザー》を扱っていたのだが、弾みで刃が右足に2センチほど突き刺さった。

やれやれと思って刃を抜いて傷口を押さえて応急措置をして、夜中だったので仕方なくタクシーを呼んで救急病院に行ってもらった。局部麻酔をして傷口を開いて消毒し、2針縫って、破傷風のワクチンとセファクロルという抗菌作用のある抗生物質をもらって帰ってきた。

真夜中の救急病院で他に患者もいないこともあって、非常に若い医師と「死ぬような傷じゃなくて良かった」「いやいや、人間って簡単にラクに死ねませんからね」という他愛のない話をしていた。

「好きなもんを飲んで食って早死にしたいという人もいますけど、人間って簡単じゃないですから。だいたいは病気になって身体が言うことを聞かなくなっても生きておられますよ」

この話題はほんの一瞬のとても他愛のないものだったが、私は何となく心に残った。今の医学は人を助ける能力に長けている。人の寿命がどんどん延びているのは、環境が良くなっていることもあるのだが、医学が非常に発達して日々、治療法や製薬が開発されているからだ。

それは素晴らしいことなのだが、認知症で寝たきりで身動きができなくなっても、それこそ脳死しても、肉体は延々と生かし続けることが今の医学では可能である。

医師の言う通り、「いつ死んでもいい」と暴飲暴食に明け暮れて重度の生活習慣病になっても、昔のようにすぐに死ねるとは限らなくなっている。つらく苦しく長い闘病が延々と続いて長生きし続けるのだ。

私自身は長生きしたいという気持ちはさらさらなく、健康寿命を失ったらさっさと死にたいと思っている。

どんなに長生きしてもだいたい2040年前後には死にたいと思っているのだが、下手に医師にかかったら長生きさせられるかもしれない。自分の人生の終わりは自分で始末するしかないとも考えている。

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「健康寿命は何とか長めに保っておきたい」と誰もが思う

野生動物は自分で餌を食べられなくなった時点で終わりだ。病気や怪我や老衰で立てなくなったり歩けなくなったら弱肉強食のルールの中で死んでいく。

しかし、人間の寿命には2種類ある。平均寿命と健康寿命だ。人間は病気や怪我や老衰で立てなくなったり歩けなくなったとしても介護してくれる人がいるので、自分で自分の面倒を見られなくなっても死なない。自分で食べられなくなっても胃瘻で生きながらえる。

だから、介護を受けなくても良い時点までの寿命を「健康寿命」と呼んで、実際の寿命とは分けているのだ。

健康寿命は国によってそれぞれ違っている。日本の健康寿命は比較的長い。性別によっても違うのだが、男性と女性を比べると女性の方が健康寿命が長い。

男性72.14歳
女性74.79歳

男性の方が早く身体が壊れるのは間違いないのだが、たかだか二年ほどの差なのでそれほど大きな差ではない。70代のどこかが大きな転機になりそうだ。

私が「寝たきりになるギリギリの直前で死にたい」というのは、要するに野生の動物と同じく「健康寿命を失った瞬間に死にたい」と言っているのと同じであるということでもある。

健康寿命を失っても死にたくない、寝たきりになってもとにかく死にたくない、介護で生きるのもいいもんだと思う人も多いと思うので、死に対する思いは人それぞれでもある。

しかし、ひとまずは「健康寿命は何とか長めに保っておきたい」というのは誰しもが思うことだろう。健康寿命を長めに保つのは悪い話ではない。自分で自立した生活ができるというのは幸せなことだからだ。

そのためにすべきことは、以前にも書いた。(ブラックアジア:年齢がいけばいくほど格好をつけた方が健康に良い理由とは

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そんなことを言っている場合ではないということをひしひしと感じる

健康寿命、健康寿命と言っているが、実のところ私はまったく健康ではない。身体中がボロボロだ。体力はすでに全盛期とは程遠いほど失われたし、腰も痛いし、目も疲れる。聴力も失ったが、最近は固有名詞もすぐに浮かばなくなって自分の老化ぶりに苦笑する。

今までまったく健康には大して関心もなかったが、そんなことを言っている場合ではないということをひしひしと感じるようになった。

20代の頃の私はクスリ嫌いでサプリメントの類いもいっさい飲まなかったのだが、最近はビタミンCやらDHA(EPA)やらベータカロチンなどをきちんと飲むようにするようにしている。長生きしたいからではなく、健康寿命を少しでも維持できるようにしたいからでもある。

サプリメントについては「効かない、意味がない、プラセボ(偽効果)だ、食事をきちんと取っていれば必要ない」という声もある。もしかしたら、そうかもしれない。ある主のサプリメントについてはまったく効果がないということもあり得る。

しかし、私はもともと極度の偏食で野菜はほとんど食べず、そこら辺のジャンクフードで生きているようなものだから、ビタミンなどのサプリメントは普通の人よりも必須な身体であると思って偏食をカバーする意味で飲んでいる。

最近は漢方にも深い関心を持つようになった。漢方も医師によっては頭から否定する人も多いのだが、足がつった時やつりそうな時に飲む芍薬甘草湯などは異常なまでに効くので必ずしもプラセボではないと確信している。

ただ、花粉症に小青竜湯が効くとか葛根湯が効くというのはないというのは実証しているので、すべての漢方が効果を発揮するという盲信は持っていない。

クスリと言えば、医師のクスリはおおむね信用して飲むようにしている。きちんと効いているというエビデンスがあるからだ。

クスリには症状を完治させるものと、抑制させるものがある。その違いをきちんと把握しながら飲むのであれば、過剰な期待感を持たずに飲むことができる。

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国民皆保険制度は崩壊して「貧乏人は早死に」が現実化する

私も20代の頃はそうだったので分かるのだが、クスリに対しては異常なまでに拒絶心を持つ人もいる。「クスリは毒だ、飲まないに越したことはない」と頑なに思っている人も多い。

それを補完する医師もいる。たとえば日本薬剤師会会長の児玉孝氏は「患者よ、クスリを捨てなさい」と主張する医師のひとりだ。

2014年の『週刊現代』では『現代の西洋医学におけるクスリというのは、人工的に作られた化学合成物質ですから、身体の中にはもともと存在しないものであり、「毒」と言ってもいい。できれば飲まないほうが良いものなのです』と述べている。

「私が患者だったら飲みたくないクスリがある」とか「クスリは製薬会社が儲かるために作った毒物」という意見もある。コロナワクチンも「毒だ、陰謀だ」と絶対的な拒絶を主張している人もいるが、いつの世の中でも「クスリは絶対に嫌だ」と考えている層は少なからずいる。

それほど極端でなくても、「健康のためにクスリは飲まない」というクスリ嫌いな人が大勢いるというのは私は知っている。思想としてそのような主張をする人は、それもひとつのライフスタイルなので意志を貫けばいいと私は思う。

私自身は、若さを失ったと自覚する年齢層の人間は極端な拒絶心は持たないで、適切にクスリを利用した方が合理的だと考えている。2006年以後、私は激しい頭痛やめまいに長く苦しんだのだが、あの時の私から鎮痛剤を奪ったら私はきっと自殺していただろう。

クスリは好きではなかったが、鎮痛剤の威力には素直に感銘を受けたし、製薬会社の創薬には感謝した。鎮痛薬を作る製薬会社には命を助けられたと思っている。寿命は延びなくてもいいが、健康寿命は延びて欲しかった。適切なクスリが健康寿命を延ばしてくれた。

クスリはそれぞれ副作用があり、そこに着目したら毒物であるのかもしれない。しかし、小さな副作用よりも大きな効果を得る方が利点が多いのであれば、クスリをためらう方が間違っている。

年齢がいけばいくほど「クスリは身体に悪い」という考え方が身体に悪くなる。

どのみち年齢がいけば身体が少しずつ壊れていくのだ。壊れていく身体を放置するより、手当をした方が健康寿命が延ばせるのだからクスリに対する拒絶心を持っている人はどこかで思い切り反対に振り切った方がいい。

クスリをスナック菓子のように取れと言っているのではなく、適切なクスリは拒絶しないで必要なものとして取れと言っている。適切なクスリを飲んだ方が、飲まないよりも健康寿命が延ばせる。

もしかしたら今後は現在の国民皆保険制度も維持できなくなり、必要なクスリが欲しくても手に入らない時代がくるかもしれない。

2017年、日本経済新聞が全国の医師、約1000人に対して行った調査によると、医師の半数は国民皆保険制度は「高齢者の増大と治療費の高額化」によって維持できなくなると回答している。

私も少子高齢化の進行は、国民皆保険制度を崩壊させる危険性があると思っている。よく効くクスリは高額になって「貧乏人は早死に」が現実化するだろう。最悪の事態になる前に、クスリの恩恵をありがたく受けておくのは悪くない。

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