「日本のここがおかしい」「欧米はこうだ」「日本も見習え」というワナ

「日本のここがおかしい」「欧米はこうだ」「日本も見習え」というワナ

マスコミは「日本のここがおかしい」「欧米はこうだ」「日本も見習え」と、しばしば主張する。政権攻撃と日本人の自虐に「どこそこの国を見習え」論法は効くのだ。「外国はこうなのに日本は違う。外国を見習え」とマスコミが言うのは、日本人が「他人の顔色を読んで評判を異常に気にする民族」ということを知っているからこそ、仕掛けてきているワナである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

外国人の評判を異常に気にする民族

テレビではよく外国人に日本の文化を体験させて「日本はここがおかしい」だとか「ここが他の国と違う」とか言わせて番組を作っている。これは日本人が国際的に見ても「外国から自分たちはどう見られているのか?」を極度に気にする民族だから成り立つ番組である。

たとえば「日本では未だに死刑制度がある。世界は死刑をなくしている。日本はおかしい」と言われたら、「日本は野蛮な国なのか……」と思って日本人は萎縮してしまう。外国に合わせて死刑を廃止した方がいいのではないかと思う。

なぜ、そう思うのか。日本人は「外国人の評判を異常に気にする民族」だからだ。外国と違っていたら、自分たちがおかしいのではないか、他の国と合わせた方がいいのではないか、と思ってしまう。

国外の権威に「さっさと是正しろ」と言われたら萎縮して何も言えなくなる。それが日本人の特質なのである。「他の人がどう思っているのか?」「外国人は日本をどう思っているのか?」ばかり気にしてそれを直そうとする。

しかし、その「死刑は野蛮だ」と言っている国では犯罪者をストリートで射殺するような国であるし、場合によってはモブ・ジャスティス(民衆による処刑)で始末することも普通にある。

たとえば、南アフリカでは「死刑は残虐で非人道的な刑罰であり違憲である」として死刑は廃止されている。しかし、その「死刑は残虐で非人道的な刑罰」と言っている国で、モブ・ジャスティスは普通に行われているのである。

村で強盗が捕まると、村人が寄ってたかって強盗をなぶり殺しにする。時には強盗を叩きのめした後に、生きたまま火を付けて殺してしまうこともある。

アメリカではさすがにモブ・ジャスティスは行われないかもしれない。しかし、そのアメリカでは暴れる強盗は警官がさっさと射殺して終わらせる。日本が死刑を廃止するのであれば、モブ・ジャスティスや警官による犯罪者の射殺は認めないと不公平でもある。

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「よそはよそ、うちはうち」

外国人が「日本のここがおかしい」だとか「率直な意見」だとかを言うのを聞くと、日本人は慌ててしまって「おかしいのか?」「言われた通りに変えなければ」とか思ってしまうのだが、本当にそれでいいのだろうか。

そもそも、「日本のここがおかしい」と偉そうに批判している外国人の方が「おかしい」ということもあり得る。

たとえば、「日本は宗教心がない」とか言っている欧米人もいる。

その欧米人の信じる宗教というのがキリスト教で、そのキリスト教は「イエスは3日後に生き返った」とか「水の上を歩いた」とか「奇跡を起こした」とか馬鹿丸出しの荒唐無稽のヨタ話満載の宗教だったりする。

新約聖書を読んでみればいい。次から次へと非現実的な話が出てきて、ヘドが出そうだ。欧米人は、そんなヨタ話を本気で信じている。そんな壮大なホラ話を信じている人間に「日本は宗教心がない」と言われても、別に大したことではない。

「そんなものを信じているお前の方がおかしい」と私は言いたい。欧米にも不可知論者や反キリストの人もいる。このような立場の人の方が、よほど私には合理的に見える。

冷静に考えると、アラーの神だとか、ユダヤの神だとか、ギリシャ神話の神だとか、ヒンドゥ教徒の神だとか、みんなまとめて妄想の産物でしかない。

そんな神が実在していると本気で信じている人がいたら頭がおかしいのではないかと思ってしまうが、それを信じている人にとって見ると、それを信じない人間の方が「頭がおかしい」という話になる。

別に誰が何を信じても信じなくてもいい。自由だ。キリスト教だろうがイスラム教だろうが、信じたい人は信じればいい。しかし、日本人は別にそんなものを信じる義理はない。

それぞれの宗教・文化・社会・慣習は世界中で違っているのだから、「日本のここがおかしい」「日本は宗教心がない」とか言われても、いちいち反省するとか取り入れる必要などない。外国人の評判を異常に気にする必要性はどこにもない。「よそはよそ、うちはうち」なのである。

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欧米人の評判を異常に気にする民族

「外国人の評判を異常に気にする」のは何のためか。そもそも、外国と言っても200ヵ国近い国があるが、日本は「どこの外国」を気にしているのか?

それは、もちろん欧米である。

日本人はキリスト教徒でもないのにクリスマスを祝い、バレンタインデーを祝い、最近ではハロウィンを取り入れたりしている。「日本は祭り好きだから、世界中の祭りを何でも取り入れるんだ」と説明する人もいるが、私はそう見ていない。

インドでは「ディワリ(光の祭り)」というロマンチックで美しい祭りがあるのだが、「祭りが好きだ」とか言っている日本人はこのインドのディワリを取り入れたりしていない。(ブラックアジア:ディワリ。インドが一年で最もロマンチックになる「光の祭り」

タイでは「ロイクラトン」という美しい祭りがあるのだが、「祭りが好きだ」とか言っている日本人はこのタイのロイクラトンを取り入れたりしていない。なぜ欧米の祭りは取り入れて、アジアの祭りは無視するのか。

もしかしたら、欧米は世界の支配者であり強者なので、日本人はそれに媚びているだけではないのか。つまり、日本人は「外国人の評判を異常に気にする民族」ではなくて、「欧米人の評判を異常に気にする民族」ではないのか、と言える。

アラブ人が「なぜ日本人はブルカをかぶらないのだ? おかしいじゃないか?」と言っても日本人は一顧だにしない。しかし、日本人はアメリカ人が何も言わなくてもアメリカ人みたいな格好をする。

つまり日本人はアラブ人の評判などまるっきり何も考えていない。欧米のことだけを考えている。欧米が右を向けと言えば右を向き、左を向けと言えば左を向く。欧米が「こうだ」と言えば、それに沿っているのかどうかを異常に気にする。

うまくいっている部分については「日本は何でも取り入れる」と自慢する。うまくいっていない部分については「日本は駄目だ」と卑下する。たとえば、別にアメリカが二大政党制だからと言って日本も二大政党制にしないといけないわけではない。

しかし、アメリカの真似をしたい日本は日本が二大政党制になっていないと「日本は駄目だ」と卑下する。

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「どこそこの国を見習え」論法

日本のマスコミは自分たちの都合に合わせて「アメリカを見習え」だとか「ドイツを見習え」だとか「スウェーデンを見習え」みたいな主張をしてきた。

それは往々にして政権攻撃のための主張で、「外国はそれができているのに日本政府はそれができていないので、どこそこの国を見習え」という論法である。あるいは、日本人を自虐させるための論法である。

政権攻撃と日本人の自虐に「どこそこの国を見習え」論法が効くのだ。

「外国はこうなのに日本は違う。外国を見習え」とマスコミが言うのは、日本人が「他人の顔色を読んで評判を異常に気にする民族」ということを知っているからこそ、仕掛けてきているワナである。

自分たちの主張に沿ったことをやっている国を見つけてきて、「この国はやっているのに日本はやっていない」としたり顔で述べる。実は、自分たちの主張に沿っていないことをやっている国もたくさんあるのだが、それは隠蔽しておく。

「アメリカは犯罪者を現場で射殺することもある。日本も見習え」
「中国は政府の言うことを聞かないマスコミは潰す。日本も見習え」
「台湾にはスパイ防止法共謀罪がある。日本も見習え」
「オーストラリアでは外国人が犯罪を犯せば強制送還だ。日本も見習え」

このようなことを言うマスコミはいない。それは自分たちの都合とは違っているので主張しないのである。

それに気づかないで、日本人はいつまでもマスコミの都合の良い「どこそこの国を見習え」論法で萎縮させられたり、自虐させられたりしている。

日本人はもっと「日本のここがおかしい」とか「欧米はこうだ」とか「日本も見習え」みたいな心底くだらない主張や論法で誘導されることに危機感を抱いた方がいいのではないか。

そうしないと、いつまで経っても自虐させられ、世論誘導させられ、精神的にも支配させられてしまう。

『驚くべきCIAの世論操作(ニコラス・スカウ)』

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