アメリカのレイプ被害者の全国ネットワークであるWBC協会のジャネット・ロートゼン氏は、多くのレイプ被害者と接し、カウンセリングや統計を取る中で知り得たことがあるという。
それは、被害に遭った女性たちの多くがレイプ後に、リアルで執拗な「悪夢」にさいなまされ、繰り返し繰り返し恐怖を味わっていることだった。
そのため、レイプ被害者は恐怖のために眠ることができない。そして最悪なのは、やっと眠れたと思った時、突如として夢の中でレイプ被害が「悪夢」となって蘇り、恐怖の中で目を覚ますという。
「悪夢」によって、精神と身体が蝕まれていく。中には自殺に追い込まれる女性もいる。
彼女たちが持つその「悪夢」の強さは、地獄の戦場を経験してきた兵士たちのPTSD(心的外傷後ストレス障害)とまったく同じレベルの強度であるという。
彼女たちは「悪夢」によってしばしばパニックになり、我を忘れて泣き叫ぶ。
こうしたレイプ被害者のPTSDの治療で、アメリカではADHD(注意欠如多動症・注意欠陥多動性障害)の薬を与えられることが多いと言われているが、社会学者であるアレクサンドラ・ピアース氏は「間違った薬である」と言う。
「悪夢」が追い払われない限り、それは容易に再発する。彼女たちの見る「悪夢」とは私たちが考えるものとはまったく違ったものである。どう違うのか……。