2015年7月、フィリピン・アンヘレスは雨ばかりだった。そんな雨交じりの中を女性とふたりで歩いている時、向こう側から車がやって来た。私は気を利かせて彼女を舗道側に寄せた。
フィリピンの車は乱暴な運転が多いので、彼女が車と接触しないようにと思ったのだ。
彼女は素直に舗道側に寄ったのだが、車が通り過ぎた後にすぐ、彼女は舗道の穴に足を取られて倒れてしまった。雨なので道も暗く、穴がよく見えなかった。
道が濡れていたので、彼女の素足も濡れたが、幸い怪我はなくて彼女はすぐに立ち上がった。その時、彼女が倒れたのは私が舗道側に寄せたからだと考えて、”I’m sorry.”(ごめんね)と無意識に口からこの言葉が出た。
すると、彼女は “Why, do you apologize?”(どうして謝るの?)と私に尋ねた。
それを聞いた瞬間、私は心の中で「そうだった、ここは日本ではなかった」と改めて思ったのだった。
日本人の女性なら「舗道側に寄せたらこんなことになったのだから、それを謝っている」というのはすぐに気付いて、「ごめん」という謝罪は「不運な目に遭わせてすまない」という意味で言っているのだと気付く。