2018年12月16日。西日本新聞でひとつの興味深い記事が載っていて、私はこの記事にとても深く惹かれた。30年連れ添った内縁の妻が「今となっては、誰だったのか分からない」というのである。
2018年10月。取り壊しが予定されていた福岡県大野城市内のアパートの一室で、白骨死体が見つかった。このアパートには74歳の夫と53歳の妻がひっそりと暮らしていたのだが、死んでいたのは53歳の妻の方だった。
遺体はすでに白骨化していたのだが、死亡届は出されておらず、男の姿はなかった。死体遺棄であった。遺体の状況から、死亡して一年以上は経っていたのは確実だった。
やがて男は逮捕されたのだが、取り調べの結果、異様な実態が明らかになっていった。男は内縁の妻が死んでも葬儀には出さず、ずっとアパートの一室のベッドに安置していたのである。消臭剤を撒いて臭いをごまかし、ずっと妻の遺体と一緒に暮らしていた。
男はずっとこのままの状態で一緒に暮らすつもりでいたのだろう。しかし、老朽化したアパートの取り壊しが決まり、出ていかなければならなくなった。夫は仕方なく妻の遺体を放置して逃げたのだった。
2年間、白骨化していく妻の遺体と一緒に暮らしていたというのも衝撃的なことなのだが、問題はそれだけでなかった。男は、内縁の妻が何者なのかを知らず30年間一緒に暮らしていたのである。