軍産複合体を抱えるアメリカ。中国は今のアメリカにとっては「動く標的」

軍産複合体を抱えるアメリカ。中国は今のアメリカにとっては「動く標的」

ドナルド・トランプ大統領は、大統領になる前から公然と中国を批判し続けていた。中国政府がありとあらゆる方法で知的財産権を侵害し、非合法な手段で大国になり、アメリカに公然と挑戦していることに対して激しく抗議していた。

その姿勢は今でもまったく変わっていない。

これに対して中国は、議員やメディアへの賄賂攻撃や買収のような「孫子の兵法」で対抗しようとしているのだが、インターネット時代において中国の裏工作は次々と明るみに出るようになって逆に中国への反感は世界的に深まるような事態になっている。

最終的にアメリカと中国は戦争するのだろうか。今のところはまだ「新冷戦」の状態だが、かつてのベトナム戦争のように世界中のあちこちで米中の代理戦争が起きたとしても不思議ではない。

アメリカは戦争を恐れない国だ。必要があれば、アメリカはいつでも戦争に向かう。(ブラックアジア:「自由はただではない」という言葉の裏には何があるのか?


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

巨大な軍産複合体を養う敵はどこにいるのか?

アメリカは戦争ができる国であるというのは、国内で軍産複合体と呼ばれる巨大なシステムが自国内に定着しているからでもある。数十万人が軍産複合体の中で働き、数百万の家族が軍産複合体の中で生活を育んでいる。

逆に言えば、戦争が起きなければアメリカの軍産複合体は疲弊し、多くの人がリストラや生活苦に落ちることになる。

アメリカが戦争を必要としているのは、1990年代の軍産複合体の苦境を振り返れば分かる。

アメリカは1945年以降はソ連(現ロシア)との冷戦を戦ってきたが、この冷戦は1989年の東欧共産主義諸国の体制崩壊とそれに伴う転換によって「アメリカのひとり勝ち」という結末に終わった。

その結果、端的に言うと、アメリカで肥大化した軍需産業が要らなくなった。敵が消失したのだから、軍需産業が存続する意味もなく、必要もなくなったのだ。

そこでアメリカ政府は軍拡から一転して軍縮に走り、1990年代は軍需産業は未曾有の不景気となっていった。この時期、軍需産業は単独での生き残りが不可能になり、多くが合併やリストラを余儀なくされていったのだ。

この時期の大統領が、2018年11月30日に亡くなったパパ・ブッシュである。パパ・ブッシュは一期4年の大統領だったが、二期で勝てなかったのは、実のところ軍需産業の苦境を救済できなかったのも要因の一つであったことが指摘されている。

巨大軍産複合体は、いくら合併し、リストラを繰り返したとしても、次の戦争がなければ生き残ることは難しい。なぜなら、戦争こそが巨大軍需産業の「存続価値」を証明するものだからである。

この暗い1990年代を経て、巨大軍産複合体を思い切り飛躍させたのは誰だったのか。それは、ブッシュ・ジュニアである。

「軍産複合体を活性化させなければアメリカは立ち直れない」とブッシュ・ジュニアは心の底から考えていた。しかし、ソ連が崩壊した時代、巨大な軍産複合体を養う敵はどこにいるのか?

2001年9月11日、ブッシュ・ジュニアは軍産複合体を飛躍させる「次の敵」を発見することになった。

それが「イスラム過激派テロリスト」というものだった。

アメリカは9月11日の同時多発テロ以降、アフガニスタン・イラクへと歩を進めて軍事に傾倒していった。「もう、軍需産業は必要ない」と言われていたのが一転して、軍需産業がアメリカの最重要産業となっていった。

パパ・ブッシュとブッシュ・ジュニア。両大統領とも軍産複合体と密接な関係のあった大統領だった。2018年11月30日。パパ・ブッシュは死去している。94歳だった。

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弾道計算をしていた人間が金融工学を始めた

ブッシュ・ジュニアは2001年11月にはすでにアフガニスタンを攻撃し、2003年にはイラク侵攻をも成し遂げた。軍産複合体は湧き上がった。

しかし、アメリカはイラクで多発するテロを収束させることができずに泥沼に落ちていき、莫大な戦費を消耗して徐々に国内経済を悪化させることになった。

アメリカの経済を吹き飛ばしたのは2008年のリーマンショックなのだが、皮肉なことがある。

リーマンショックは金融工学によって培われたデリバティブが吹き飛んだことによって起きている。この金融工学というのは、元はと言えば軍産複合体が生み出していたことだ。

1990年代、アメリカの軍需産業はリストラの過程で多くの人材を放出したが、その一部は金融市場に流れていった。今までコンピュータで弾道計算をしていた人間は、同じコンピュータを使って、今度は金融工学を始めたのだ。

軍産複合体の中で弾道ミサイルのシミュレーションを計算していた工学が、今度は金融をシミュレーションするようになった。その金融工学がデリバディブを生み出し、そしてそれがグローバル経済に乗って世界中に拡散していった。

コンピュータでリスクを計算し、ギリギリまでリスクを取る姿勢が投資銀行の新しいスタイルとなっていったのである。それが開花したのが2000年代だった。

やがて金融市場は、ゴールドマン・サックスのような投資至上主義の企業によって、まさに「金のためなら何でもする」ような状況になった。

しかし2007年になると、サブプライムローンの破綻が次々と伝えられるようになり、やがてそれが大きなうねりとなって巨大な信用収縮(クレジット・クランチ)を引き起こしていく。

2008年にはベア・スターンズを崩壊させ、リーマン・ブラザーズを破綻させ、AIGもフレディマックもファニーメイもすべて吹き飛ばす金融津波となっていった。

軍産複合体が生み出した徒花である金融工学が市場を撹乱し、吹き飛ばした。リーマンショック以後、アメリカはもはや中東での戦争をし続けることができなくなり、軍産複合体は再び萎んでいくことになる。

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アメリカにとって戦争は重要な「事業」である

2009年にバラック・オバマが共和党に競り勝って大統領になれたのは、もうアメリカはブッシュが始めた戦争を戦い続けたくなかったからだ。

アメリカはアフガニスタンでもイラクでも泥沼に引きずり込まれ、さらに2008年には金融をも吹き飛ばして惨憺たる様相になっていた。

したがって、オバマ大統領の仕事は「戦争をしない」ということに尽きた。オバマ時代のアメリカは指導力を喪失していたと評されているのだが、その理由はオバマ大統領が意図的に戦争を避けていたからでもある。

オバマ大統領の二期によって、アメリカは何とか金融面を立て直した。

金融・経済が立ち直ると、次はいよいよ軍産複合体を富ませるための政策が必要になってくる。戦争をしなくなると窮地に陥ってしまうのが軍需産業なのだから、アメリカにとって戦争は重要な「事業」である。

アメリカの軍需産業は血に飢えた狼のように、戦争を欲している。

依然としてアメリカには巨大な軍需産業がひしめいている。ロッキード、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ハネウェル、ボーイング、ゼネラル・ダイナミックス、ロックウェル・コリンズ、LLL……。

それぞれが数十万の社員を抱え、多くの関連会社を抱え、それぞれの軍需産業の社員が家族を抱え、彼らが巨大な政治の票田となっている。戦争がなければ、彼らは失業する。だから彼らは、高らかにアメリカの正義を訴えて戦争にひた走ってくれそうな政治家を選んで、政治の中枢に送り込む。

そこに誕生したのがドナルド・トランプという稀に見る好戦的な大統領である。ドナルド・トランプ大統領は「偉大なアメリカを再び」をモットーに政治をしている。折しも現在、そんなアメリカの目の前に、新しい巨大な敵が出現しているのだ。

それが、中国という国である。

アメリカは戦争を恐れない国だ。必要があれば、アメリカはいつでも戦争に向かう。中国は今のアメリカにとっては「動く標的」になりつつある。(written by 鈴木傾城)

アメリカは戦争を恐れない国だ。必要があれば、アメリカはいつでも戦争に向かう。中国は今のアメリカにとっては「動く標的」になりつつある。

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