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インドネシアのカリマンタン島には、「人食い族」「首狩り族」と呼ばれていたジャングルの原住民が存在していた。彼らは「ダヤク族」と呼ばれていた。本来、カリマンタン島の奥地でひっそりと暮らす民族だった。
しかし、ジャングルの木が金になることを知ったインドネシアの独裁者スハルト元大統領は、取り巻きの華僑に伐採権を与えて材木をどんどん国外に売り飛ばし、巨額のバックマージンを得るというビジネスを始めた。
東南アジア最大のジャングル地帯は切り拓かれ、プランテーションとなり、ダヤク族の生活は追い込まれた。
ところで、ジャングルを切り拓くために使われた民族がいる。それが「マドゥラ族」だった。よその島から連れてこられたこの民族は気性が荒く、金のためなら何でもしたのでカリマンタン島では嫌われ者だった。
ダヤク族とマドゥラ族。この2つの相容れない民族の間で、ジャングルの中で激しい憎しみが渦巻いた。そして2001年、いよいよカリマンタン島で大虐殺が発生したのだった。
互いに相手を殺し合い、生首を掲げ、相手の民族の女性をレイプし、虐殺した。それはインドネシア史に残る凄惨極まりない大虐殺だったと言われている。
その渦中にあって両親を目の前で殺されたマドゥラ族の女性と、私はカリマンタン島ポンティアナの売春宿で知り合っている。サリーという名の女性だった。