「パンドラの箱」というのを聞いたことがある人は多いはずだ。
「絶対に開けてはいけない」と言われていた箱を開けたらありとあらゆる災厄が箱から飛び出して世の中に出ていき、急いで閉めたら希望だけが箱に残ってしまったという神話だ。
私たちの生きている社会には、ありとあらゆる醜怪な犯罪が渦巻いている。そして、人々は疫病に苦しみ、人生の悲嘆に苦しみ、裏切りに苦しみ、貧困に苦しみ、別離に苦しみ、人生の辛苦は途切れることはない。
誰の責任なのか。ギリシャ神話は、「パンドラ」という名の女の責任だと言っている。このパンドラというのはギリシャ神話では「人類最初の女性」ということになっていて、全知全能の神ゼウスが意図的に地上に送り込んだ「災い」だったとされる。
当初、地上には「男」しかいなかった。人類は男だけだった。この男だけの人類は、プロメテウスという神に火を与えられて優れた存在になっていくのだが、与えられた火は天界の所有物で、プロメテウスは勝手にそれを盗んで人類に与えていた。
だから全知全能の神ゼウスは怒って、パンドラという邪悪な「女」という存在を地上に送り込んだのだ。さらにゼウスは「絶対に開けてはいけない」という箱をパンドラに渡して地上に送っていた。
パンドラは自分の存在で男たちを惑わすだけでなく、開けてはならないという箱を神ゼウスの言いつけを守らずに開けて地上に災厄をもたらした。それにしても、パンドラはなぜ「絶対に開けるな」と言われた箱を開けてしまったのか?