経済格差から健康格差へ。シングルマザーは健康的にも精神的にも壊れる

経済格差から健康格差へ。シングルマザーは健康的にも精神的にも壊れる

経済格差は健康格差をもたらす。経済的に不利な状況にある人であればあるほど健康にも不利なのだ。

貧困が解消できないために、身体の具合が悪くても肉体を酷使する仕事にしか就けないこともある。そうすれば健康を害しやすく、悪化させやすくなる。

病気になっても貧困であれば医師にもかかれない。市販の薬も買えない。

貧困であれば栄養が行き届いた食事をすることができず、体力は極度に衰えていく。貧困であればエアコンを使うこともできず、夏はうだるような暑さに苦しみ、冬は家の中でガタガタと震えて暮らさなければならない。

貧困であることで、あらゆる場面で不利な環境におかれてしまい、それが健康の格差につながり、そして最後には寿命の格差にもつながっていくのである。

こうした「貧困格差が健康の格差をも誘発する」というのをデータで明確に指摘したのが、千葉大学予防医学センターの近藤克則氏だった。

がんでの死亡リスクも、不眠の割合も、鬱病も、所得が低いほど高い。病気と所得は関連していたのだ。それをデータで明らかにした近藤克則氏の功績は大きい。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

支えてくれる人、環境、仕事、預金がなければ?

人は誰でも人生のどこかで追い詰められる経験をする。自分を取り巻く外部環境が悪化し、次に経済環境が悪化し、そして精神状態が悪化する。

人生の早い段階で追い詰められる人もいれば、遅い段階で追い詰められる人もいる。人それぞれだ。

そして、どうあがいても絶望的な状況から抜け出せなくなるときもある。もがいても這い上がれない状況が続くと、人の心は少しずつ壊れていき、限度を越えたとき、日常生活を送ることすらもできなくなる。

「身体が壊れる」のと違って、「心が壊れる」のは、理解されにくい。

しかし、人間の精神状態も肉体と密接につながっている以上、心もまた無理をすれば壊れてしまうものという認識をするのは重要だ。

心が壊れると「あれをしよう、これをしよう」という気持ちが完全になくなっていく。そして「しなければならないこと」をすることもできなくなる。

日常生活を送ることすらできなくなり、ずっと寝ているしかないような状態、自責ばかりが募り、疲れ果てて死んでしまいたいと泣きながら思うような状態、もう頑張るという言葉さえも通用しなくなる状態……。

これを鬱病という。

鬱病になったとき、自分を支えてくれる人、環境、仕事、預金がなければどうなるのか。もともと悪化していた生活は、より悪化することになる。どん底に転がり落ちるのだ。

ここで考えなければならないことがある。堕ちた女性の多くは、少なからず鬱病の結果であることを……。

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自分は関係ないだと言える人はひとりもいない

鬱病は誰にとっても他人事ではない。

現代の社会は、働いている人たちを切り捨てながら利益を追求する弱肉強食の資本主義であり、自分だけは関係ないだと言える人はひとりもいないはずだ。

リストラ、失業、倒産、給料減少、あるいは過酷な労働環境。そういったものに巻き込まれていくと、壮健な人であっても、ゆっくりと少しずつ心の芯が削り取られていく。

グローバル社会が世界中に浸透するようになって、鬱病になってしまう人が増えている。日本でも統計に現れるだけで100万人以上もの人が鬱病と診断されている。

しかし、日本の場合は欧米と違って自分が鬱病であることを隠す人も多く、診断を受けない人も珍しくない。精神科に通うことは恥だと考える人もいて、日本の場合だけは「隠れ鬱病」が膨大に存在している。

鬱病にも、軽い症状から重い症状までそのレベルの度合いがそれぞれ違っているが、いずれにしてもふだんのパフォーマンスが発揮できず、まわりに迷惑をかけて、重要な仕事や人間関係から外されてしまうことには違いない。

ところで、鬱病になったとき、以下のどちらが回復しやすく、ギリギリのところで踏みとどまれるだろうか。

(1)仕事も家族も親も預金もある人
(2)仕事も家族も親も預金もない人

仕事もあって理解を示してくれ、家族も見捨てずに庇護してくれ、自分を心配して経済援助も可能な親もいて、貯金もしっかりある人は、一時的な鬱病であっても手厚く看病される。

やがて回復したときには、また社会復帰もしやすい環境にあるのは間違いない。

しかし、仕事もなく、自分を看てくれる家族もなく、親からも見放され、貯金もない人が孤独の中で鬱病になったら、どうなるのか……。

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大変な状況にある人が、心も身体も壊れやすい

何も持たない人は心が壊れやすい。近藤克則氏は年収400万円以上の人と100万円未満の人の抑鬱的傾向を調べると、「男性で6.9倍、女性で4.1倍もの差があった」としている。

ちなみに年収100万未満の人は、男性で15.8%、女性で15%が抑鬱的傾向があった。

お金がないというのは、多くの人を精神的に苦しめ、そして地獄に突き落とす。そんな社会の中、大変な状況に生きている人が、心も身体も壊れやすい人である。

鬱病には、男も女も関係がない。女性であったら、社会が手加減して助けてくれるという話にはならない。弱肉強食の資本主義は、女性であっても容赦なく地獄に突き落とす。

東南アジアでも、日本でも、そして世界中でそうだが、シングルマザーとは、実はその「大変な状況」に一番追い込まれやすい環境であるというのはよく知られている。

子供がいるので、彼女たちはフルタイムの仕事ができない。本来であれば妻子を養う必要のある男が、責務を果たさずに逃げており、家族は自分が面倒を見なければならない子供だ。

それがシングルマザーの環境である。

その中で、しっかりしなければならないはずの自分が社会の重圧に潰され、心が壊れ、鬱病に追い込まれたら、どうなるのかは火を見るよりも明らかだ。

シングルマザーの多くは貯金がない。仮にいくばくかの貯金があったとしても、たちまち追い込まれてしまう。なんとか100万円程度の貯金があったとしても、そんなものは、鬱病になった途端に半年で消えて行ってしまうだろう。

シングルマザーの多くは貯金がない。仮にいくばくかの貯金があったとしても、たちまち追い込まれてしまう。なんとか100万円程度の貯金があったとしても、そんなものは、鬱病になった途端に半年で消えて行ってしまうだろう。

鬱病になったシングルマザーは厳しい局面に

日本社会では「ひとり親世帯」の相対貧困率は54.6%である。ひとり親世帯と言えば、中にはシングルファーザーもいるが、圧倒的にシングルマザーであるのは間違いない。

要するに、シングルマザーの半数は貧困だ。しかし、追い詰められたシングルマザーは誰もが生活保護を受けられるわけではない。まして、鬱病になったシングルマザーは厳しい局面に立たされる。

「なぜ、働かないのですか。働けるでしょう?」

そのように、冷徹な言葉の中で、まるで不正をする犯罪者か何かのように追及される。

「病気だし、手のかかる子供もいる」と話をすると、「子供が育てられないのなら、子供を児童施設に預ければどうですか?」と言われてシングルマザーは仰天してしまう。

自分の命よりも大切な子供、何としてでも守りたいと思っている子供さえも、取り上げられる……。精神的に弱っている中で、そんなことを言われるのが、母親にとってどんなにつらいことなのかは想像するだけで分かる。

自分を経済的に支援してくれる親もいない。夫も消えた。養育費も入らない。生活保護も受けられない。そして、自分もまた鬱病で追い込まれてしまっている。

そんな八方塞がりの中で、社会から完全に孤立無援状態になってしまったとしたら、いったいどうすればいいというのか。

水商売や風俗ですらも、鬱病に苦しんでもがいているような女性を採らない。風俗はボランティア活動ではない。「トラブルが起きる」と思った女性は最初から雇わないのである。

ますます、シングルマザーは追い込まれていく。

風俗や出会い系サイトに彼女たちが必死にしがみつくのは、そこで身体を売るしか生き残る道がないからでもある。かろうじて起き上がれるときに彼女たちは身体を売り、そしてまた鬱病の苦しみの中に引き込まれていく。

東南アジアで当たり前のように見てきたシングルマザーの苦境は、いよいよ日本にも上陸し、弱った女性を直撃して、じわじわと毒牙を広げている。

心が壊れそうだと思ったとき、それは守るべきものがある女性にとっては、危険な警告(アラーム)でもある。壊れてしまう前に、生き残らなければ地獄に堕ちる。(written by 鈴木傾城)

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