どん底に堕ちたら這い上がれないのは、さらに堕とす仕組みがあるから

どん底に堕ちたら這い上がれないのは、さらに堕とす仕組みがあるから

日本の1980年代後半に起きた壮大なバブルで極限まで儲けたのは莫大な借金をして不動産や株式に突っ込んだ人である。1990年のバブル崩壊で為す術もなく破綻していったのも、莫大な借金をして不動産や株式に突っ込んだ人である。

この浮き沈みの激しさを倍加させているのは、「借りたカネ」であるのは言うまでもない。

個人事業主や起業家は、事業を始める時や継続する時や拡張する時には、必ず借金をするかどうかの選択に迫られるのだが、100%の人は事業の拡張のために借金をする選択をする。

借金は成長をブーストさせるものであり、一代で成り上がるには必須のツールである。

だから起業家や商人に「借金をするな」と言っても聞く耳を持たない。借りられるカネはいくらでも借りるし、それをすべて事業につぎ込んで人生を賭けた賭けをする。

たとえ、その借金で首が締まって爆死することになっても彼らはそうする。カネを借りて、修羅場に飛び込む勇気がなければ事業経営はできないのである。

だから、事業家の人生が強烈な浮き沈みの人生になってもまったく不思議ではない。借金が人生を良い方向にも悪い方向にも倍加(ブースト)させるのだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

最初の返済に失敗した時点で転落は決定的に

借金をするのは事業家だけではない。世の中には、最初から金銭観念がない人間もいる。

たとえば、石川啄木などはそうだった。この作家には経済観念など最初からなかった。(ブラックアジア:石川啄木。娼婦の身体に溺れ、借金まみれになって死んでいった詩人

これだけ高度情報化の時代になり、高等教育も進んだ社会でも、金銭感覚に乏しい人は相変わらず存在している。銀行ローンや消費者金融が駅前に大きな看板を出しているのを見ても、それが分かるはずだ。

自分がどれだけの金利を課せられるのかを考えもせずに、15%の金利だろうが25%の金利だろうが、平気でカネを借りて回る人たちもいる。

この傾向は真夜中に生きる人たちに顕著である。働いて手に入ったカネを右から左へと贅沢品や享楽や豪遊で使い、足りなくなったらキャッシングして資金繰りする人も多い。

こうした人たちもまた人生の浮き沈みは凄まじい。金がある時とない時の差は、山から谷まで急斜面を一瞬で転がり落ちるような、そんな変動を見せる。

なぜ悠然と構えることができないのかというと、借金には金利があって期限もあるからである。

期日が決められていることで毎月のように、場合によっては毎週のように金策に追われる。そしてトータルで見ると借りたカネ以上に返さなければならない。

そのため、いったんキャッシングで自転車操業に入ってしまうと、最初の返済に失敗した時点で転落は決定的になる。月が変わるごとに谷の深さは底なしになる。

風俗に転がり落ちた女たちの少なからずが借金に追われて修羅場の中で生きているのは、私も確認している。追い詰められた中で精神的に今にも壊れる寸前の中で働いている。

そして、彼らは深みに堕ちたら這い上がれない「仕組み」にとらわれていく。底に堕ちたら、そこでは堕ちた者をより深みに突き落とす人間たちがいるからだ。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

深みに堕ちたら這い上がれない「仕組み」とは

私は一時期、シンガポールの売春地帯であるゲイランに好んで泊まっていた時期があったのだが、ここでは24時間ずっと女たちがストリート売春をしていた。

ストリートに立つ女たちの国籍はまちまちだった。インドネシア女性もいれば、タイ女性もいれば、スリランカ女性もいれば、中国大陸の女たちもいた。中にはラオスから来たという女もいた。

彼女たちに話を聞くと、ほとんどは貧困から出稼ぎ売春を選び、手配師に飛行機代や諸経費を前借りしているので、最初の数ヶ月は売春してもカネが入らない状況に置かれていた。

体調が悪くても、精神を病んでも、借金を返し終わるまで逃げられないのである。この修羅場に、女たちはこぞってアルコールやドラッグに手を出して憂さ晴らしをする。

私の知っている女たちは、アルコールやドラッグが好きな女たちが多かった。なぜ、彼女たちがそうなるのかというと、売人たちがうようよしていて親切に声をかけてくるからである。

「つらいのかい。じゃ、これで忘れたら?」とドラッグを手渡しする。

インドネシアの売春地帯でも似たようなものだった。売春宿に女たちは手配師(人身売買業者とも言う)にカネを建て替えてもらって連れて行ってもらっているので、彼女たちも最初の数カ月は無給で働くことになる。

売春宿には「ママサン」と呼ばれるオーナーがいるのだが、このママサンが曲者(くせもの)だった。

新米の女が来たら積極的に女たちを酒やタバコやドラッグやギャンブルをけしかけて依存症にさせたり、華美な服を次から次へを買わせてカネを散財させる。(ブラックアジア:インドネシアの夜。一番「怪しげな者」は誰だったのか?

なぜそんなことをするのか。カネを稼ぐどころか使わせることによって女たちが永遠に売春地帯から抜け出せないようにするためだ。

転落したら、転落した世界でそこから這い上がれないようにより深い地獄に突き落とす。そのような世界がすべての国のアンダーグラウンドで定着しているので、それはもはや「仕組み」として理解すべきなのだ。

若い女たちは、自分がより地獄に突き落とされる「仕組み」の犠牲になっているということに気づかないまま、より深みに堕とされていく。

インドネシアの辺境の地で真夜中に渦巻く愛と猜疑心の物語。実話を元に組み立てられた電子書籍『売春と愛と疑心暗鬼』はこちらから。

それは、地獄に続く落とし穴にも続いている

事業家は経営がうまくいかなくなって借金まみれになり、やがて自転車操業に追い込まれるようになると、まるで降って湧いたように救世主のような人間が姿を現す経験をする。

その見知らぬ人間は、丁寧で紳士的で優しい口調で「儲かるビジネスがあるのですが、一緒にやりませんか。出資してくれれば大儲けですよ」とささやく。

あるいは、「儲かる貴金属取引」「儲かる新規公開株」「儲かる不動産経営」のような話をしてくる人もいる。

「別に無理にとは言いませんよ。他にもこの話に乗りたいという人はたくさんいますから」と言って、出資を無理に誘わないのだが心理的な揺さぶりで出資を促す。

普段なら「胡散臭い」と思っていても、本業が火の車のときはワラをもつかむような気持ちでいるので、深く考えることもなく金を出して赤子の手をひねるようにカネを持っていかれる。

カネで転落した人間の前には、それが必ずこのような地獄からの使者が現れて、堕ちた人間をより深みに突き落とす世界がある。

上流階級の人間は親の資産と財産を継承させる「仕組み」が機能しているのはよく知られているのだが、社会の底辺では失った人間からさらに奪う「仕組み」が機能していることはあまり知られていない。

それは誰かが意図的に作り上げたものではなく自然発生的にできた仕組みで、日本だろうが欧米だろうが東南アジアだろうが、すべての国で同じ世界がある。

底に堕ちたら這い上がれないのは、堕ちた人間をさらに堕とすという現象に気づかないまま、ずるずると泥沼にはまっていくからである。

社会が自然発生的にこの「仕組み」を内包していることに気づかなければ、どこまでも闇に引きずり込まれていく。

では、この地獄に堕ちたくなければどうするか。アンダーグラウンドの仕組みをよく知っておくのはもちろんだが、それよりもさらに良い方法がある。

借金の入口で引き返す。常識をルールとして持つ。これだけで、かなりの人が助かる。

借金はひょっとしたら天国の入口かもしれないが、地獄に続く落とし穴にも続いている。堕ちたら、さらにひどい人間がやってきて、もっとどん底に落とす。

しかし、最初から関わらなければ何もない。トラブルはどのように解決するかを考えるより、最初から避ける方がいい。それはすべてにおいて通用する。(written by 鈴木傾城)

シンガポールの売春地帯ゲイランでストリート売春をするタイ女性。若い女たちは、自分が「より地獄に突き落とされる仕組み」の犠牲になっているということに気づかないまま、より深みにはまっていく。

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