人生100年時代に突入しつつあるが、それが悲惨な高齢者を生み出す

人生100年時代に突入しつつあるが、それが悲惨な高齢者を生み出す

リンダ・グラットン氏は『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』において、「人の平均寿命は伸び続けており、2107年には主な先進国では半数以上が100歳よりも長生きする時代に入る」と予測している。

実際、その予兆はある。

「グラクソ・スミスクラインはシンクレア教授と共に1000億円規模の研究開発と臨床実験を行っており、いよいよ人間の寿命を20年から30年近く延ばす研究が佳境に入っている」と以前に書いた。(ダークネス:本当なのか? 数年のうちに長寿が実現し寿命は100歳になる

日本は平均寿命が2016年の段階で「女性87.14歳、男性80.98歳」である。これから医療がさらに発達したら、確実に「100歳よりも長生きしてしまう」という実感を持つ人もいるはずだ。

寿命が伸びるというのは、本来は喜ばしいことなのかもしれないが、実際の話「切実な問題」が発生するのは間違いない。その問題とは言うまでもなく「健康」と「金」である。

健康は最新の注意を払って医療と薬に頼るとしても、問題は「金」だ。家族主義が崩壊している中で老いて金が尽きると、あとは悲惨な老後しか残っていない。金が消えても、誰もそれを与えてくれないのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

70代になる頃には貯金も消えて年金で細々と生きる

5000万円あれば、資本主義の仕組みを利用して何とかなるかもしれない。(マネーボイス:これから「長生き地獄」時代に突入する日本人は、最低でも5,000万は貯めろ=鈴木傾城

しかし、誰もが5000万円を貯めて運用できるわけではない。2000年以降、日本は非正規雇用者が爆発的に増えて雇用が安定しない社会と化したが、それによって貯金することができない人も珍しくなくなったことも要因として上げられる。

こうした非正規雇用の人々は、当然のことながら厚生年金に加入できていない。貯蓄広報中央委員会は、家計の金融行動に関する世論調査で「金融資産を持っていない」と答えた世帯が30.9%であった。3人に1人の割合である。

彼らは老いて働けなくなったら、老齢基礎年金(国民年金)のみで老後を生きていくことになるのだが、この年金は40年間の全期間を払っても約月6万5000円なので、これで生きていくことは今の日本では厳しい。

夫婦であれば2人足してやっと13万円で、それに貯蓄の取り崩しで老後を細々と生きていくことになる。

非正規雇用者で人生を暮らしていた人は、貯金などないから老後は一気に貧困に転がり落ちる確率が高い。これが現在の日本の底辺で深刻化している「下流老人」である。

では厚生年金に入っていれば悠々自適なのかと言えば、まったくそうではない。

年金の支給は基本的には65歳からになるのだが、実際には多くの企業は60歳を定年としている。大企業では一足早く、55歳定年というところもある。

その場合、再雇用されるとしても給料は驚くほど低いものになってしまうので、この50代後半の時期から貯金の取り崩しが始まる人も増えてくる。

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今後の日本は「下流老人」で埋め尽くされる国に

貯金の取り崩しが月10万円とすると、年間で120万円が消えていくことになる。10年で1200万円が消える。

日本人の貯蓄額はその平均値が1209万円なのだが、この平均値というのは一部の富裕層が底上げしているのでこの額になっているだけだ。

実際には多くの人が1200万円もの貯金を持っていないことの方が多い。1200万円どころか現金で言えば500万円もないという60代も多い。

その場合、どうなるのか。結局70代になる頃には貯金も消えて足りない年金で細々と生きるしかなくなる。

実際、そのような境遇に落ちてどうにもならなくなった人が生活保護を申請して生きるようになっており、だから生活保護受給者の半分は高齢者となったのだ。

70代でも悲惨なことになってしまう可能性が高いのに、そこから寿命が延びて100歳以上生きるようなことになったら、絶望しかないはずだ。

少子高齢化の日本では不動産はよほどロケーションに恵まれた場所でないと資産にならない可能性の方が高い。不動産を売ったら現金が作れると思って買ったのに、価値を失っている可能性もある。

このままでいくと今後の日本は「下流老人」で埋め尽くされる国となる。政府になんとかしろと今さら言っても無駄だ。

なぜなら、この後に及んでも誰も「少子高齢化」を解決しようとしていないし、これが日本最大の問題になるという実感を持つにはすでに遅すぎた。

少子高齢化を放置した結果のツケを今の日本人は今後支払っていくのである。

国民年金で生活できないというのは、すべての日本人が現実として受け入れるべきだ。国民年金で老後が暮らせるようになる時代は絶対に来ない。

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日本の底辺で高齢層の貧困はどんどん広がっていく

政府は国民年金を次のように考えている。

「最低限の生活は国民の自助努力によって達成すべきであり、国民年金はそれを補助するためのものである」

「国民年金で少しくらいは補助はするが、最低限の生活は自分で何とかしろ」というのが国の立場である。

政府も潤沢な資金を持っているわけではないのだから、それ以上のことはできない。国民の前に政府自身が歳入不足で困難に落ちている。

そうした状況なのだから、日本の底辺で高齢層の貧困はどんどん広がっていくことになるはずだ。まず真っ先に叩きのめされるのは、厚生年金に加入していなかった人たちと貯金がまったくない人たちになる。

厚生年金に加入していないと言えば、フリーランスで仕事をしていた人たちはその代表かもしれない。

一部の成功者をのぞくと50代、60代を超えた時点で、フリーランスで仕事をしていた人たちの貧困は目を覆わんばかりと化す。

50代を超えると体力がなくなってしまうので無理が利かなくなり、フリーランサーを雇用する企業も老いた人間よりも若手を選ぶようになって実績があっても仕事が消える。

ただ、フリーランスの人間を憐れむには及ばない。普通の人々もまた貧困が目の前に迫ってきているので、他人事のように彼らを見ている暇などない。

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いずれ、社会は増える高齢層を抱えきれなくなる

大企業は利益を求めて全世界に触手を伸ばすので多国籍化していき、世界を俯瞰して安い労働者がいるところでモノを製造し、高い価格で買う人間のいるところで売る。

そのため、高い賃金をもらっていた先進国の労働者がみんな企業にリストラされて再雇用が難しくなり、条件の悪い賃金で働くしかなくなる。

そんなシステムになると、貧困は表社会で真面目に働いていた人間たちにも広がるようになり、それが止まらなくなった。ハイテク産業が生み出すイノベーションも働き口を奪う。

年金が足りない上に仕事が消えていくのだから、これで悠々自適の老後が送れるような社会になるわけがない。

核家族化が進んだことによって子供が親の面倒を見るというスタイルも今は消えつつあるのだが、最近はさらに厄介な問題も増えた。

子供がいつまで経っても自立できるほどの賃金をもらえる仕事に就けなかったり、自宅に引きこもって外部との接触を断ったりする。そうやって親に寄生しながら生きるような子供が、数十万人規模で出現しているのだ。

そして、子供が自分の年金と貯金を食いつぶす。

さらに高齢化が進むことによって介護施設も足りず、あっても資金不足で施設に通えないような状態になる。そんな中で貯金も失うので、生活が成り立つわけではない。

現在、生活保護の受給者はうなぎ登りに増えているが、その要因はすべてを失った高齢層の存在がある。

生活保護に頼りたくないという高齢層も多いが、困窮の度が深まると背に腹はかえられない状況になる。こうした層が次々と生活保護の申請をするようになっていく。

しかし、生活保護も無限に高齢層に金を出せるわけではないので、間口はどんどん狭くなっていく。

いずれ、社会は増える高齢層を抱えきれなくなり、自助努力で生きていけない高齢層を見殺しにする社会が生まれる可能性もゼロではない。

そんな中で、「人生100年時代」に突入しようとしている。なかなか、凄惨な話だと思わないだろうか?(written by 鈴木傾城)

現在、生活保護の受給者はうなぎ登りに増えているが、その要因はすべてを失った高齢層の存在がある。生活保護に頼りたくないという高齢層も多いが、困窮の度が深まると背に腹はかえられない状況になる。こうした層が次々と生活保護の申請をするようになっていく。

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