私はまだスリランカが内戦の泥沼の中にあった2004年に北部都市ジャフナを訪れている。
ジャフナは少数派タミル人の武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の牙城で、スリランカ政府から激しい攻撃を受けて街は荒んでボロボロになっていた。
青く美しい海が広がる海岸都市ジャフナだったが、空港を降りてから、物々しい兵士と破壊された建物が続いて異様な雰囲気に包まれていた。
街に入ってもインド圏の土地にしては驚くほど活気がなく、不気味な感じだった。爆撃された痕、荒廃したホテル、松葉杖で歩く人たちの姿があちこちにあり、写真を撮ろうとしたら何人かの兵士が制止した。
タミル人の宗教はヒンドゥー教だ。インドでは圧倒的大多数がヒンドゥー教だが、スリランカではヒンドゥー教人口はたったの12%程度しかない。約70%は仏教が占めている。
これだけ街は破壊の痕が続いているのに、驚いたことにジャフナのヒンドゥー寺院はとても整備されていて、砲弾の痕も見えなかった。
多くの人が跪いて神に祈り、寺院にいるとここが30年以上も続く内戦の激戦地であることを忘れた。