海外をさまよう人間であればあるほど経験することがある。それは「知り合った人から、うまい話が自然と持ちかけられる」という経験だ。
いろんな話がある。
私はタイ・バンコクのパッポンに沈没していた時期があったが、そこでひとりのタイ女性に「パスポートを売ってくれ」という話を持ちかけられたことがある。それだけで金をくれるというのである。
「自分のパスポートを売るのが嫌なら、知り合いの日本人のパスポートを持って来てくれてもいい」とも言われた。
パスポートを転売したら数十万円の儲けになる。そこから数万円をバックしてくれる。日本に帰りたくなったら、頃合いを見て日本大使館で「パスポートをなくした」と言えば再発行手続きをしてくれる。
タイは盗難パスポートの売買が活発な国で、犯罪者が盗難パスポートで誰かになりすまして国を行き来するのである。
ギャンブルに誘われるのもしばしばだ。「カモの中国人がいるから巻き上げよう」と言われるのだが、もちろん中国人はグルであり、本当のカモは自分の方だ。(鈴木傾城)
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