
セックスドール施設(セックスドール売春宿)という業態が、2017年前後から世界各地に出現している。人間の性労働者ではなく、シリコン製の等身大人形を時間貸しする店舗だ。
カナダのトロントで開業した「キンキーズドールズ」は、30分60ドル、人形本体の販売価格は2500ドルからという料金で営業を始めた。人形は発話し、体温に近い温度を持ち、体の一部を動かすことができる。
運営側はこれを店舗ではなく「ショールーム」と呼んだ。客は購入前に試すことができる、という建て前である。
同じ時期、ヨーロッパでも似た施設が次々と計画された。
スペイン発の「ルミドールズ」はイタリアのトリノに進出し、フランスのパリでは「Xドールズ」が開業した。イギリスのゲーツヘッドにも同種の施設ができた。報道は一様に「世界初」「欧州初」という見出しを掲げ、テクノロジーが性産業を書き換える瞬間が来たかのように扱った。
実際、この業態はセックス産業が抱えてきた問題のほとんどを回避できるはずだった。まず、人身売買がない。ピンプがいない。性感染症の伝播もない。未成年者が働かされることもない。
ところが、である。
トリノの「ルミドールズ」は開業からわずか9日で市警の立ち入りを受け、閉鎖に追い込まれた。ゲーツヘッドの施設も早期に姿を消した。アメリカ初となるはずだったヒューストンの店舗は、開業前に工事を止められ、最終的に市議会によって封じられた。営業を続けられたのはパリの「Xドールズ」くらいだ。
奇妙なのは、閉鎖の理由が「人形との性行為が違法だから」ではないという点だ。成人の外見を持つ人形を所有することも使用することも、ほとんどの国で罪にならない。つまり、犯罪ではない行為をおこなう店舗が、次々と行政と警察によって潰されている。
いったい、何が起きていたのか?



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