
IMFが公表する一人当たりGDPで最下位に沈むのはブルンジだ。年間320ドル。1日130円にも届かない。ワースト10のうち9か国がアフリカに集中する。すでに最下層にいる国だが、成長率はマイナスなのでさらに困窮する可能性もある。どうして、こんなことになるのかはご存知の通りだ。(鈴木傾城)

プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。経済分野を取りあげたブログ「フルインベスト」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。連絡先 : bllackz@gmail.com
一人当たり320ドルという世界
国際通貨基金(IMF)は毎年、各国の一人当たりGDPを公表している。国内で1年間に生み出された付加価値の総額を人口で割った数字であり、そこに暮らす人間ひとりがどれだけの富を生産しているかを示す。
この値が極端に低い国は、そのまま世界の最貧国と重なる。
最下位はブルンジである。一人当たり320ドル。月額ではない。年額だ。12で割れば1か月あたり27ドル、日本円にしておよそ4000円になる。1日あたりでは130円ほどでしかない。人間ひとりが1日に生み出す経済価値のすべてが、日本のコンビニのおにぎり1個分に届かない。2位から10位も書いておこう。
2位 南スーダンの340ドル
3位 マラウイ463ドル
4位 イエメン464ドル
5位 中央アフリカ529ドル
6位 マダガスカル562ドル
7位 スーダン606ドル
8位 モザンビーク645ドル
9位 ニジェール697ドル
10位 コンゴ民主共和国702ドル。
10か国のうち9か国がアフリカ大陸にある。比較のために日本の数字を置いておくと、2024年で32859ドル、世界39位だ。ブルンジとの開きはおよそ100倍になる。日本人が正月三が日で生み出す価値を、ブルンジの人間は1年かけて生み出している計算になる。
だが、本当に重要なのは金額ではない。成長率である。南スーダンはマイナス29%、スーダンはマイナス24%、マラウイはマイナス17%、イエメンはマイナス16%。世界最下層にいる国が、そこからさらに極貧に落ちていくのだ。
もちろん伸びている国もある。プラス12%のニジェール、プラス6%のマダガスカル、プラス5%のコンゴ、プラス4%の中央アフリカとモザンビークがそうだ。それなのに、世界最下位から10番以内に居座り続けている。
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世界最下層で、なお落ちていく国
南スーダンは2011年に分離独立した世界でもっとも新しい国のひとつだ。輸出と財政収入のおよそ90%を石油が占める。内陸国であるため、原油は隣国スーダンを縦断するパイプラインを通り、紅海のポートスーダンから船に積まれる。輸送路が他国の領土にしかない。
2023年4月、そのスーダンで国軍と即応支援部隊(RSF)の戦闘が始まった。2024年2月、南スーダンの原油を運ぶパイプラインが破損する。修復されないまま1年が過ぎた。輸出量は2024年1月の日量18万6000バレルから、同年12月には5万8000バレルまで落ちた。
世界銀行は2024〜25年度のGDPが30%縮小すると見積もり、アフリカ開発銀行は2023〜24年度の縮小幅を27.6%とした。機関により数字は異なるが、いずれも2割から3割という規模だ。2024年末のインフレ率は115%に達した。
ブルンジは違う理由でどん底にいる。この国も内陸国で、輸出商品はコーヒーと紅茶にほぼ限られ、外貨を稼ぐ手段が乏しい。
マラウイは労働人口の約80%が農業に従事し、タバコ、砂糖、紅茶が輸出の8割を占める。2023年の輸出は9億6600万ドル、輸入は31億4000万ドルだった。輸入が輸出の3倍を超えれば、慢性的な外貨不足に陥る。
マラウイの通貨であるクワチャは、2025年7月時点で1ドル=1700クワチャ前後で、2022年と比べて価値が半減している。2025年4月の年間インフレ率は29.2%。主食のトウモロコシ粉は50キロで63ドル相当、2024年12月の3倍になった。
2025年2月には首都リロングウェで大規模な抗議行動が起き、周辺4都市へ飛び火した。
ドル建ての一人当たりGDPがマイナス17%と記録された理由は、ここにある。現地通貨で見れば経済そのものは縮小していない。通貨が半値になったために、ドルへ換算した瞬間、国民の稼ぎが半分に消えた。
今後、これらの国は今よりもさらに経済が悪化してしまうはずだ。
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成長しているのに貧しいままの国
イエメンは、輸出そのものを失った国だ。2022年、原油の輸出が停止した。輸出ターミナルが攻撃対象になり、積み出しができなくなったためである。産油国が石油を売れなくなれば、外貨は入らない。2023年のGDPはおよそ10%縮小した。
世界銀行によれば、2015年から2023年までの8年間で、イエメンの実質一人当たりGDPは54%減少したという。つまり、半分以下になったということだ。人口の半数が食料不安を抱えている。
中央アフリカは、成長率がプラス4%と記録されながら529ドルの位置にいる。内陸国であり、輸出入はカメルーンのドゥアラ港から首都バンギまで続く1本の陸路にほぼ依存している。
この国には、たしかにダイヤモンド、金、木材といった資源はある。だが治安の不安定さが投資を遠ざけており、資源が国民の所得にならない。
マダガスカルは、2025年に政権そのものが倒れた。9月25日以降、断続的な停電と断水への不満から若年層を中心とした抗議行動が全土に広がり、20人以上の死者が出た。
10月12日、ラジョエリナ大統領はフランスの軍用機で国外へ脱出する。14日、軍の精鋭部隊CAPSATを率いるランドリアニリナ大佐が権力の掌握を宣言し、17日に暫定政権の大統領へ就任した。
経済統計だけを見れば、マダガスカルは2024年に4.3%、2025年に3.2%成長している。それでも国民が抗議デモに出たのは、成長がまったく感じられないからだ。
そもそもマダガスカルは政府に力がない。税収のGDP比は10.5%、非公式経済がGDPのおよそ47%を占める。国家が経済の半分を把握できず、税を取れず、電気も水も供給できない。成長率は上向いているのに、インフラがぜんぜん整わない。
ここに、成長率と生活水準が乖離しているのはここに理由がある。
平均値がわずかに上がっても大多数の生活は動かない。プラス4%という数字は、その国に暮らす人間に対して何も約束していない。むしろ、統計が改善したという事実だけが独り歩きし、支援や関心が薄れていくという皮肉な現象も起きる。
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国民はどこまでも貧しくなっていく
「いつも戦争している国」と揶揄されているスーダンは、今も内戦の渦中にある。国軍と即応支援部隊の戦闘は3年を超えた。アフリカ開発銀行によれば2024年のGDPは13.5%縮小し、IMFは同年を20.3%のマイナスと推計している。
貧困率も高い。開戦前の36%から、2025年には71%へ達した。人数にしておよそ2300万人が極貧である。2025年のインフレ率は150.2%、外貨準備は11億7000万ドルで輸入の1.1か月分にすぎない。
モザンビークには天然ガスがある。北部カーボデルガード州の沖合に大規模なガス田が確認され、巨額の開発投資が計画された。だが同州では武装勢力の攻撃が続き、事業は停滞したままだ。
2025年の成長率は0.2%まで落ち込み、公的債務はGDPの91%に達する。人口の71%が貧困層に分類され、人間開発指数は193か国中182位である。
ニジェールはプラス12%と、この10か国で最も高い成長率を記録した。ベナンへ抜ける原油パイプラインの稼働が大きい。それでも一人当たりGDPは697ドルにとどまる。2023年の軍による政権掌握、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の制裁、サヘル地域の武装勢力……。石油が出ても、それを運ぶ国境と守る治安が伴わない。
10位のコンゴ民主共和国は、世界のコバルト供給のおよそ7割を握る資源大国だ。電気自動車もスマートフォンも、この国の鉱山なしには成立しない。その国の一人当たりGDPが700ドル台でしかない。
これらの10か国を並べて見えてくるのは、貧困が資源の欠如から生じているのではないという事実だ。石油があっても運べない。ガスがあっても掘れない。コバルトがあっても、利益は国外へ出ていく。
資源を国民の所得へ変換する構造が、いずれの国にも存在していない。そして、その構造を破壊しているのは、ほとんどの場合、戦争であると言える。戦争で国土が荒れたら、資源がどれだけあろうが国民はどこまでも貧しくなっていく。







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