◆ロマンス詐欺の猛威。手口が洗練されてきているので逃げられなくなっている?

ロマンス詐欺が猛威を振るっている。

2026年7月2日、警視庁大崎署は横浜市に住む22歳の会社員の女を詐欺の疑いで逮捕した。被害者は東京都品川区の70代男性である。2人がマッチングアプリで知り合ったのは2025年3月だった。

女は「大学院に追加合格したみたい」と嘘のメッセージを送り、入学金などの名目で3回にわたって計約42万円をだまし取ったとされる。実際には大学院を受験する予定すらなかった。さらに「がんになり、入院治療費が必要」と告げて約200万円を振り込ませた疑いもある。

犯人は日本人とはかぎらない。2025年の1月7日、兵庫県警国際捜査課と姫路署は、ナイジェリア国籍で姫路市に住む45歳の男を詐欺の疑いで再逮捕した。フィンランド人の女性ITエンジニアを名乗る人物による詐欺で、口座から現金を引き出す役割を担っていたとされる。

その前年11月にも、NATO所属の英国人男性医師を名乗る人物による国際ロマンス詐欺で逮捕・起訴されていた人物だ。捜査当局は男のスマートフォンから、上位者とみられる人物が出金額を指示するやりとりを確認している。

ロマンス詐欺に騙される人は知能が低いのだろうか?
どうやら、そうでもないようだ。

香川大学名誉教授の高倉良一氏(71)は、法教育を専門に50本以上の論文を書いてきた法律のスペシャリストである。その高倉氏が、Facebookへの何気ない投稿をきっかけに925万円を失った。

定年退職後に研究室の本を断捨離する様子を綴った投稿に、美しい女性からメッセージが届いたのが始まりだった。何度かやりとりするうちに、高倉氏は心を許し、彼女を信用し、送金するようになり、親友に嘘をついて350万円を借り、それすらも送金した。マンションまで売却している。

警察庁の確定値によると、2025年のSNS型ロマンス詐欺の認知件数は5645件、被害額は約546億円で、前年に比べて件数は47.6%、被害額は36.3%増えている。SNS型投資詐欺と合算すれば1834億円である。

ロマンス詐欺は、いったいなぜ人々を信用させることができたのだろうか……。

数か月かけてもカネを要求しない

ロマンス詐欺の最大の特徴は、いきなりカネを要求しないことにある。接触の初期段階でカネの話はまったく出ない。出るのは日常の会話だけだ。

「おはよう」「今日は何を食べた?」「疲れていませんか?」

こんな些細な連絡が、毎日、数週間から数か月にわたって続く。そして、打ち解けてくると、自分がどんな人間なのかを語る。そこで、少しずつ、不幸な「身の上」を語るようになるのだ。

たとえば、詐欺師は先に「失恋した」「家庭が地獄だった」などの過去の傷を話す。打ち明けられた側は、その傷に応えようとして自分も話す。このような内容が数十回積み重なった時点で、相手はもう見知らぬ他人ではなくなっている。

高倉氏のケースでは、相手は「平和」や「人権」といったテーマに強い関心を示し、長文の議論に付き合った。高倉氏は相手を志を共にする同志だと感じた。恋愛感情という以前に、自分をこれほど深く理解してくれる人間はいないという確信が先に生まれている。

ここに達したとき、疑うという行為そのものが相手への裏切りに変わる。疑えなくなるのではない。疑いたくなくなるのだ。ここまできて、精神的な結びつきが深まると、いよいよ「仕掛け」に入る。

最初の金銭要求は、かならず断りにくい少額から始まる。

空港で荷物が止められた、送金手数料が足りない、家族の入院費が要る。額が小さいからこそ、「それくらいなら、貸してやろう」という判断が働く。だが、ここで送ってしまうと、相手のワナにはまる。

二回目、三回目と額が上がっていくとき、被害者はもう引き返せなくなっている。これは、心理学でサンクコスト効果と呼ばれるものだ。ここで疑ったら、今までの時間と相手に感じていた恋愛感情が無に帰す。

これを詐欺だと認めることは、この数か月の自分は間抜けで、さらには恋愛感情がすべて虚構だったと認めることと同義になる。人はそれに耐えられない。だから、さらに送ってしまうのだ。

詐欺師は先に「失恋した」「家庭が地獄だった」などの過去の傷を話す。打ち明けられた側は、その傷に応えようとして自分も話す。このような内容が数十回積み重なった時点で、相手はもう見知らぬ他人ではなくなっている。

SNSは標的選定のデータベースとして機能

ロマンス詐欺と聞けば、多くの人は判断力の衰えた高齢者を思い浮かべるはずだ。だが、その認識は間違っているかもしれない。

警察庁の2025年統計によると、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害者の年齢層は、男女ともに40代から60代が多数を占めている。つまり中心にいるのは現役世代なのだ。仕事をし、収入があり、社会的な判断を日々おこなっている層だ。

なぜこの層なのか。

理由は単純で、詐欺師にとって価値があるのは騙しやすいからではなく、相手がカネを持っているからだ。判断力が弱いから狙われるのではない。カネがあるから狙われる。詐欺グループは効率で動く組織であり、労力に見合う回収額が見込める相手を選別している。

詐欺師は狙う相手をあらかじめ調べている。

ここで見落とせないのが、被害者自身が自分の情報をSNSで無防備に開示していることが多いことだ。たとえば、彼らは仕事での悩みだとか、家族を失った報告だとか、日々の心境などをSNSで吐露することもある。

詐欺師はそうした情報を検索でフィルタリングしながら、「今、感情的に不安定で、かつ、カネを持っている人間」を選び出している。SNSは出会いの場であると同時に、標的選定のデータベースとして機能している。

自分は騙されないという確信なんか意味がない。

詐欺師はその上をいく。高学歴で、専門知識があり、社会的地位のある人ほど、自分の判断力を信用しているので、逆に騙しやすいのかもしれない。

彼らは洗練された詐欺の手口に出会ったことがないので、疑わしい兆候が現れても、それを自分の判断で処理できると考えてしまう。高倉氏が突かれたのも、そういうことだったのだろう。

もうひとつ、被害を長期化させるのが相談相手の不在だ。

恋愛関係を家族や友人に話す習慣がない人ほど、外部からの点検が入らない。その点を突いて、詐欺師は「この関係は2人だけの秘密にしよう」「周囲は理解してくれない」と言って、巧みに相手を孤立させていく。孤立させられた時点で、勝負はついているとも言える。

恋愛関係を家族や友人に話す習慣がない人ほど、外部からの点検が入らない。その点を突いて、詐欺師は「この関係は2人だけの秘密にしよう」「周囲は理解してくれない」と言って、巧みに相手を孤立させていく。孤立させられた時点で、勝負はついているとも言える。

会う前に金を要求されたら、それは詐欺である

ロマンス詐欺の防御は意外と簡単なのではないかと私は思っている。それは、とても常識的なものだ。

「会ったこともない相手と恋愛しない」
「一度も対面していない相手にカネは送らない」
「誰にもカネを貸さないことをポリシーとする」

これだけで被害の大半は防げる。警察庁の定義でも、SNS型ロマンス詐欺は対面することなく関係を深めて金銭を騙し取るものとされている。海外赴任中、軍務中、医療活動中、家族の看病中など、相手が会えない理由を言ってくれば、その時点で疑う必要がある。

投資や副業の話が出たり、カネを貸してくれという話が出たら、もはや「真っ黒」であると考えても過言ではない。「将来のための資産形成」とか言うのもあるらしいが、会ったこともない相手と「将来のため」もあったものではない。

暗号通貨の話が出たら、もはや120%詐欺と見ていい。サンクコストなんか言っている場合ではない。詐欺は詐欺なのだ。

相手から送られてくる写真なんかも信憑性はない。ウェブではいくらでも他人の写真を流用できるし、AIでも作れる。ビデオ通話にしても、生成AIによる映像加工が実用段階にある以上、信用できるはずがない。

ただ、こんなことを書いていて、私が詐欺に遭って有り金すべて奪われたら、それこそ大恥になってしまうが、私は大丈夫なのだろうか。私はインターネット上では、騙される確率はかなり低いとは思うが、対面ではからきし弱いという欠点がある。

最初から会う女性を疑わないので、何らかの詐欺の手口に誘導される確率は非常に高い。これまでも怪しい女性には何人も会っている。だが、怪しい女性はどこか違和感を覚えることも多い。そうなると、私は防御的になる。

「カネを貸してくれ」みたいな話が出てきたら、その時点で私はどんな付き合いでもすべて断ち切る自信はある。これまで何百回「I can’t help you.(あなたを助けることができない)」と言ってきたか分からない。

私のような信じやすい男は、それしか防御がない。「誰にもカネを貸さない」というのは、シンプルにして最大の防御であると言える。

あなたは大丈夫だろうか?

相手から送られてくる写真なんかも信憑性はない。ウェブではいくらでも他人の写真を流用できるし、AIでも作れる。ビデオ通話にしても、生成AIによる映像加工が実用段階にある以上、信用できるはずがない。

コメント

  1. ゆう より:

    お金を借りようとする者たちはいかにも
    「私はどうしようもない弱者であり困窮している。」
    みたいなことを言ってきます。

    実際他人を最初から騙そうとする犯罪者も含めて
    彼らはどうしようもない弱者でしかないので
    そこは嘘ではないでしょう。

  2. 匿名 より:

    > 2026年7月2日、警視庁大崎署は
    > 横浜市に住む22歳の会社員の女を
    > 詐欺の疑いで逮捕した。
    > 被害者は東京都品川区の70代男性である。
    私がまず真っ先に考えたことは、「普通、22歳の若い女が、70歳代のジジイに惚れ込むかぁ??? あり得ないだろ!?!?」「老人介護じゃあるまいし」「親子どころか、祖父と孫くらいの歳の差だろ!!」

    掲載されている写真を見ても(まあ、これらの写真が、ロマンス詐欺に使われたSNSのアカウントに使われている写真なのかどうかはわかりませんが)、不自然なくらいに顔や外見が整っている感じがします。それくらいに恵まれた容姿の持ち主なら、SNSに自分が写真をアップする前に、ずっと前からハリウッドやカンヌといった映画界やファッションモデル界隈やショウビジネスの世界で相当程度に有名になっている筈だし、また、このご時世、ネットで調べればすぐに「あ、この人かぁ」などとわかる筈。該当する外見の有名人がネットで見つからなければ、「コイツはフェイク(偽モノ)だな」ということも、自然にわかるのでは??

    • 匿名 より:

      とはいえ、傾城様も述べている通り、目の前にいる生身の人間に「困っている。おカネを貸して欲しい」などと言われたら、私も相手を信じてしまうかも。「かわいそうだなぁ。しょうがない、助けてあげるか」などと考えてしまうかも。。

      > これまで何百回「I can’t help you.(あなたを助けることができない)」
      >と言ってきたか分からない。
      > 私のような信じやすい男は、それしか防御がない。
      > 「誰にもカネを貸さない」というのは、
      > シンプルにして最大の防御であると言える。
      俺には、それができるかなぁ….

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