◆【連載記念特典】鉄格子の奥の売春宿。突如として、女性を殴るオーナー

連載「アジアの暗黒街で愛を探した男」にて、第16回の記事『彼女は私の顔にツバを吐いて逃げた…荒んだ世界一の暗黒街ムンバイ・カマティプラとフォークランド・ストリートで見た「男の地獄、女の地獄」』が公開されております。ブラックアジアではあまり自分のことは書きませんでしたが、こちらでは自分のことを中心に書いております。

これを記念して、『ブラックアジア売春地帯をさまよい歩いた日々インド・バングラ編』の記事、『鉄格子の奥の売春宿。突如として、女性を殴るオーナー』を全編掲載したいと思います。

ブラックアジア

鉄格子の奥の売春宿。突如として、女性を殴るオーナー

昼間は人通りの多いヴィサルブハイパテル通りは、夜になると、どことなく危険でねっとりとした雰囲気になる。影の多い建物にへばりつくように、人々が座っていたり寝ていたりする。

しかし、よく目を凝らして見ると、彼らのほとんどがこちらを凝視しているのが分かる。明らかに警戒の色を見せている。夜のこんな時間にこんな地域を歩く外国人も珍しい。彼らが警戒を見せるのは無理もなかった。

薄闇の中でこちらを窺う目はまるで野犬のようだ。

この日は暑い夜だった。熱帯夜で部屋にいられない貧しい人々が表に出てきて、道端でギャンブルに高じていたり、大声で口論していたりする。ここでは今にも崩れそうな古いビルが立ち並んでおり、どの部屋の窓も開け放たれて上半身裸になった男たちが太鼓腹を見せつけている。

しかし、そうでない奇妙な建物の存在もあることに気がつく。

そこだけは中の明かりさえ漏れて来ないので、どっぷりと墨を塗ったような異様な暗さが際立つ。

この建物が何なのか示すものは何もない。内部から明かりが漏れてこないのをのぞけば、インドのどこにでも見られる古くて汚れた建物のひとつでしかない。

ムンバイには、『カマティプラ』と『フォークランド通り』というふたつの大きな売春地帯がある。このエリアは世界的に名が売れており、多くのセックスワーカーがそこに立って男が声をかけてくるのを待っている。

しかし、このふたつ以外にも、ムンバイには市内のあちこちに小さな売春宿が古い建物の中でひっそりと息づいている。ヴィサルブハイパテル通りにも、そんな目立たない売春宿があり、さらにその周辺にも点在する。

建物に近づくと、数人の男が威圧するように立ちふさがり、やってきた男が何者なのかをじっと観察している。

“Where are you come from?”(どこから来た?)

男の一人が英語で訊ねたので、”From Japan”(日本から)と答える。とたんに男たちが異常なほどの関心を見せる。こんなところに日本人が来るのは一般的ではないし、かなり珍しい。

彼らの好奇心を刺激するのに充分である。何をしていると聞いてくるので、答えようとすると、別の男が代わりに聞いてきた。

「ジキジキか?」

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