
私は20代の頃、当時はドラッグの治外法権だったタイのサムイ島にいたことがあるのだが、そのときに行動を共にしていた女性はヘロインにどっぷりハマっていた。
彼女については、『ブラックアジア外伝1 売春地帯をさまよい歩いた日々』の最終章「サムイ島のオジー。ドラッグとセックスの無法地帯で」で詳しく書いている。
彼女はマリファナやマジック・マッシュルームでとどまっている私をヘロインのようなハード・ドラッグには引きずり込まなかったが、もし彼女が私に無理やりヘロインを打つようなタイプだったら、私は今ごろ廃人になって死んでたかもしれない。
今も彼女のことを考える。もう生きていないだろう。
彼女はヘロインの快楽にどっぷりだった。ヘロインを打って半目を開いて意識を失っている彼女が、どれほど深い快楽を味わっていたのかは、実際にそれをやらない人間にはうかがい知ることは到底できない。
女性がセックスのオーガズムがどのようなものなのかを説明しても男にはそれが分からないし、男が射精の快楽を説明しても女性にはそれが分からないように、それぞれのドラッグはその経験者にしか快楽は分からない。
私たちが分かるのは、とにかくヘロインの快楽は、とてつもなく強烈で、想像を絶するもの「らしい」ということだけだ。すさまじく強烈な快楽を知りたければ、やってみるしかないということになる。
ヘロインの快楽は摂取直後の「ラッシュ」と続く「ハイ」の二段階に分かれるというのが定説である。
摂取直後の「ラッシュ」は、数秒から数十秒にわたる爆発的な快楽を指す。注入の場合、針を刺した瞬間に腹部や胸から全身へ暖かい波が広がる。全身の緊張が溶けるような解放感と、性的オーガズムをはるかに超える強烈な悦びが襲う。
皮膚の下をかゆみやぞわぞわした感覚が駆け巡り、浮遊感に包まれる。多くの使用者はこれを「全身が溶ける」「天国に上がる」と表現する。呼吸が止まるほどの強さで、心拍の変化や吐き気を伴うこともある。
そして、その次に「ハイ」が来る。このハイの状態がヘロインの醍醐味だ。



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