◆マキラドーラの女たち。メキシコのドラッグ・カルテルとフェミサイドの接点

相変わらず、メキシコで大量の女性が殺されている。それも尋常な数ではない。毎年約900人近い女性がレイプなどの目的で殺害されている。1日に2人以上の女が、命を奪われている計算になる。

レイプ目的、すなわち女性であったことが理由で殺される殺害は「フェミサイド」とも呼ばれているが、メキシコでは日常茶飯事である。だが、フェミサイドはこの国の全土に均等に降りかかっているわけではない。

死は、特定の場所に偏って集中している。

それは、シナロア、ハリスコ、グアナフアトなどである。これらの場所は、いずれもドラッグ・カルテルが縄張りを奪い合う抗争地帯と一致している。カルテルの勢力図と、フェミサイドの分布図はほぼ一致していたのだ。

すると、誰もが「カルテルの抗争が激しい土地だから、女性も巻き込まれて死んでいるのだろう」と考える。カルテルの抗争が日常の街では、人間の生命そのものが安い。だから女性の生命も安くなる。

これは、一見もっともらしい説明だった。ところが、この理解はまちがっているというのが現地の人々の見立てだ。それは、少なくとも半分しか当たっていない。

カルテルの暴力は、たしかにこの土地を血に染めた引き金のひとつだ。しかし女性たちが狩られやすい獲物になった理由は、メキシコでドラッグ・カルテルの抗争が始まるよりずっと前から起きていた。

抗争が激化するはるか以前、1990年代の国境の街では、すでに若い女性が次々と消えはじめていた。砂漠から白骨が掘り出され、空き地に遺体が捨てられ、それでも犯人は捕まらなかった。

では、女性を獲物に変えた本当の仕掛けとは何だったのか。なぜカルテルの地図と死の地図は重なったのか。その答えは、暴力とはおよそ無縁に見える、ある経済的な光景の中に隠されていた。

フェミサイドを誘発した「ある経済的な光景」とは何か?

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