ブラジル社会には強いホモフォビア(同性愛嫌悪)、トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)が存在する。それが極端な暴力事件や殺人事件につながっているのだが、この事実はあまり日本人には知られていない。
ブラジルは同性愛者にとって「世界でも有数の危険地帯」なのだ。
最近も凶悪な事件が起きている。サンパウロ北部ヴィラ・グスタヴォで、27歳のトランス女性、ナイラ・ヴィクトリア・ネリスが刺殺された事件だ。
民事警察によると、ナイラはサンパウロに入ってから行方不明となり、携帯電話での連絡が途絶えていた。彼女は仕事のためにサンパウロを訪れていた。そして、犯罪現場の物件に住む30歳の借主が軍警察に通報したことで事件が発覚した。
彼女は、トランスジェンダー女性であることを理由に、拷問され、殴打され、2日間の監禁を経て殺害されていたのだった。
借主は、50歳の物件所有者が人を殺害したと話し、遺体が敷地内に転がっていると警察に報告した。警察が現場に到着すると、ナイラの遺体が刺し傷を負った状態で発見され、近くにナイフが落ちていた。
彼女の友人は「ナイラが数日間拷問を受けたあと、刺されて殺害された」と述べた。この犯人は遺体の処理を友人の物件所有者に依頼したが、その友人が警察に出頭し、事件の詳細を供述したのだった。
警察は犯人を特定したが、依然として逮捕には至っていない。
この犯人は、トランスジェンダーを激しく嫌っていた。そして、トランスジェンダーは死んだ方がいいという信条によって拷問・殺害をおこなったのだった。どのようにして、犯人はナイラと接触したのはわかっていないのだが、ナイラにとっては不幸な出会いだった。
この事件はブラジルでは「日常」だ。トランスジェンダーを殺したくなるほどの憎悪をもった人間が、ブラジルには大勢いる。