借金。今の世の中はまじめな人であっても、じわりじわりと悪い借金に蝕まれる

借金。今の世の中はまじめな人であっても、じわりじわりと悪い借金に蝕まれる

「返せなければチャラにすればいい」という軽い発想は危険な発想である。貸した方も必死だ。必死で取り立てようとする。逃げようと思っても、そう簡単にはいかない。普通の人は、借金を恐れて地道に暮らすくらいでちょうどいい。借金の恐ろしさを軽視して地獄に落ちるよりマシだ。(鈴木傾城)

借金はすべて悪いわけではないが……

拙著『どん底に落ちた養分たち』の中でも取り上げているが、パチンコの養分ともなった依存者が一気に地獄に落ちていくきっかけは借金である。

依存症は金がなくなって地獄に落ちて、さらに借金をして地獄に落ち、最後に返せなくなって「ジ・エンド」となる。借金はまさに人生をむしばむ地獄であることを私は取材の中で再確認した。

しかしながら、借金地獄に落ちるのはパチンコの依存者だけではない。社会がじり貧になっていけば、かならず問題になるのが借金問題だ。

社会がじり貧になるということは、仕事が見つからないか、見つかっても賃金の安い仕事しかないことが多い。

それでも収入がゼロよりも悪い条件のほうが金が入るだけマシなので誰もが我慢して悪い条件での仕事を選ぶのだが、そうするうちにどんどん生活に追いつめられ、足りない分を借金で回す人も増えていく。

本来であれば、こうした生活苦の借金は自転車操業と化して、最後には返せなくなることが多い。借金をしなければならなくなる前に手を打たなければならない。

だが、借金というのはいきなり高額を借りて自滅するのではない。最初は数千円、数万円の小さなものから始まる。それが累積して、気がついたときは自分の限界値を超えて万事休すになってしまう。そんな人ばかりではないが、そんな人も多い。

借金にも、良い借金と悪い借金がある。

きちんと練られた事業計画の中で借金以上に収益が見込まれる場合や、入念に計算された無理のない範囲の住宅ローン等は良い借金と言える。きちんと返せる上に、それ以上の収益や資産が見込まれるからだ。

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予期せぬ出来事が自分に襲いかかる

収益を生み出す可能性があるものに投資目的で借金することはまったく悪いことではない。むしろ事業拡大、資産拡大のためには有益な手段ですらある。事業家は金を借りて一人前でもある。借金は一概にすべてが悪いわけではない。

もちろん、良い借金をしたつもりでもどこかで計算が狂って、入るはずの収益が入らなかったり、無理のない住宅ローンだったはずがリストラや倒産や病気等で返済が滞ってしまうこともしばしばある。

たまに競売に出された物件を見ることもあるが、多くは持ち主に予期せぬ何かが起きて手放したような物件である。不幸に堕ちた人たちの叫びが聞こえてくるようだ。

世の中はいつも順調ではない分、予期しないことはいつでも起きる。昨今は時代の移り変わりのスピードが早くなっており、老舗企業であっても倒産やリストラに見舞われることも多い。

巨大企業であっても愚かな経営者が何人も続くと悲惨なことになる。歴史があっても、図体がでかくても一瞬にして傾くのだ。そして、その過程で従業員の多くがリストラされ、減給される。

堅い職業だったはずの銀行も斜陽になってリストラが発生しているのを見てもわかるとおり、一流企業に勤めて終身雇用で将来は安泰だというのはもう今の時代には成り立たない。

大手だけではない。統計的に見ると、個人事業や起業の多くは5年以内に80%は潰れる。こうした組織体の多くは、蓋を開けてみれば借金地獄になっている。

逆に言えば、個人事業や起業を借金で興すのは、かなりリスクの高いギャンブルであるとも言える。事業のための借金はつねに正当化されるのだが、それが良い借金であると思うのは過信であることが多い。

小さくはじめて軌道に乗ってから拡大していくという方策が取れていないと、うまくいかなかったときに地獄を見る。良い借金のつもりであっても、それが悪い借金に変質していく地獄のような事態もしばしばある。

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知らない間に膨れ上がっていく悪い借金

消費者金融やカードローンからカネを借りて、見る見る間に膨れ上がっていく借金は、典型的な「悪い借金」だ。

こうした悪い借金は、昔は生活能力のない行き当たりばったりの人間だけが陥る地獄だったかもしれない。だが、今の世の中はまじめな人であっても、じわりじわりと悪い借金に蝕まれる。

シングルマザーも消費者金融の地獄に堕ちていくケースも多い。月末にほんの数千円が足りないことからキャッシングでそれを借りて、そこから本格的な借金の自転車操業が始まって転落していくのだ。

あるいは、独身の若い女性でも、何気なく借りたリボルビング払い(リボ払い)で、いつまでたっても借金返済が終わらず、むしろ手軽に使いすぎて永遠の借金地獄に陥っていくこともある。

通常、年収の3分の1を超えると、こうした消費型の借金は返せなくなることが多い。その後は金利もかさんで借金が雪だるま式に増えていく確率のほうが高くなる。まさに悪い借金である。

「悪い借金」は社会に出たばかりの若年層もすでに抱えていることも多い。「奨学金」という名の借金だ。

普通、奨学金と言えば優秀な貧しい学生に返さなくてもよい学費を与えるものを指す。ところが最近は様相が違っていて、単なる学生ローンを奨学金と言うようになっている。

それは全額、利子をつけて返さなければならないものだ。現在の社会は学歴社会なので、誰もが学歴のためだけに大学にいく必要が出てきている。

大学生が卒業したら、その瞬間に数百万円もの借金を背負っている状態になっているのが普通になっている。

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「チャラにすればいい」はうまくいかない

最近は、「借りたものが返せなければ踏み倒せばいい」「返せない借金を返そうとするのは馬鹿」という風潮があり、気軽に自己破産や任意整理や踏み倒しを口にする危険な人間も多くなった。

『どん底に落ちた養分たち』でも、最後に自己破産という結論があるという話を取り上げた。たしかに自殺するくらいなら、自己破産や任意整理のほうがはるかにマシだが、それはマシだというだけで社会的に問題がないとうわけではない。

信用情報機関というデータベースに、「自己破産をした」という記録が残り、クレジットカード作成、ローン、キャッシングも使えなくなる。手持ちの現金、預貯金、株式、保険金、不動産、車も取られる。そして、一時的に就けない仕事も出てくれば、制限される資格も出てくる。

弁護士、税理士、警備員、建設業者、会社役員、保険外交員等の仕事には自己破産の処理が終わるまでは就いてはいけないことになっている。長期旅行も制限される。引っ越しも許可が必要になる。

そもそも借金をする場合は連帯保証人が必要なことも多いのだが、自分が行き詰まったときは連帯保証人を巻き添えにする。

本人は責任を回避してよろこんでいるのかもしれないが、連帯保証人は免除が成立しない。そこで本人ではなく、連帯保証人に取り立てがいくことになる。つまり、家族や連帯保証人を受けてくれたもっとも親しい人に自分の借金の取り立てがいく。この時点で人間関係も信頼もズタズタになっている。

「返せなければチャラにすればいい」という軽い発想は危険な発想である。貸した方も必死だ。必死で取り立てようとする。逃げようと思っても、そう簡単にはいかないのだ。

一番いいのは最初から借りないことであり、借りる前によく考えることであり、借りたあともよく借金の状況を見張っておくことである。

普通の人は、借金を恐れて地道に暮らすくらいでちょうどいいのではないか。借金の恐ろしさを軽視して地獄に落ちるよりマシだ。特に、時代が悪くなっていけばいくほど、借金には慎重な態度で臨む必要がある。

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