反社会的な言動をしている男は、それが性格だからそうしているのではなくて、じつは脳の総表面積が平均よりも小さいことが原因なのかもしれない。
脳科学者は、行動・認知・感情などの制御で重要な役割を果たす大脳皮質の領域が、こうした男は萎縮していたことを発見している。さらに扁桃体、海馬、視床などの皮質下の領域も体積が小さかった。
要するに、反社会的な言動をしている男は、そういう性格なので問題を起こしているのではなく、脳の萎縮で問題を起こしていたということになる。
もうひとつ興味深いのは、何度も性犯罪を引き起こしてしまう男も、やはり脳に問題があることが多く、海外の犯罪者の研究でも、性犯罪者の64%ちかくが前頭前野の広い領域に障害があったことがわかったことだ。とくに、腹内側前頭前野という部分が損傷していたという。
私たちの大半は脳医学の専門家ではないので、腹内側前頭前野といわれてもそれがどういう箇所なのかわからないのだが、この部位は他人が恐怖を感じていることを察したり共感したりする部分だという。
ここが損傷していると、他人の恐怖がわからなくなる。
つまり、性行為をする局面で女性が恐怖を感じていたり、激しく拒絶していたとしても、その女性の感情には何の共感性を持てず、自分の性欲が優先される状況になる。
レイプだけではない。たとえば、女性が嫌がっているのにしつこく絡むとか、女性が拒絶しているのに平然とセクハラをするとか、そうした行為も「性欲が強い」からではなく、脳の損傷で相手の恐怖を感じなくなっている可能性がある。
だからといって、その行為が許されるわけではないのだが、一概に「男の性格がゆがんでいる」とか「男の性欲があまりにも強すぎる」というだけでは説明がつかない性犯罪の行為を説明するひとつの事実として、「脳に問題がある」というのは興味深いことでもある。