『ずっと好きだった男性が振り向いてくれた途端に、相手のことを「気持ち悪い」と感じてしまう現象』のことを蛙化現象《かえるかげんしょう》と言うのだと喧伝されている。
グリム童話『カエルの王子様』は、カエルが嫌いで壁に投げつけたらハンサムな王子になって好きになるという物語だが、『蛙化現象』は好きだった男性が振り向いてくれた途端に「気持ち悪い」となるようだ。主に女性がそのような心理現象になるらしい。
それにしても、どうしてそうなるのだろうか。
今まで気づかなかった男の無意識なしぐさや、言動や、態度や、ライフスタイルを知った瞬間に、一気に「冷めてしまった」というのは考えられる。
清廉潔癖だと思っていた人が実は売春地帯に入り浸るどうしようもない男だったとか、優しいと思っていた人が実は残虐な死体動画ばかり見ていたとか、酒もタバコもやらないのにマリファナやLSDが大好きだったとか、そういうのが分かったりしたら、それはもう激しく嫌いになって当然だ。
しかし、そういう男側に問題があるケースだけではなく、女性の複雑な心理状態が蛙化現象を引き起こすこともあるとも記されている。
「私はこんなに欠点まみれの人間なのだから、彼がこんな私を好きになるというのは、つまり彼は人を見る目がない」
好きになってもらって嬉しいのではなく、好きになってもらった瞬間に「この男は馬鹿だ」と一転して評価が下がる。男から見ると「そんなことがあるのか?」と思ってしまう理不尽な展開なのだが、そういうことも蛙化現象のひとつとしてあるというのである。
この、「好きになってもらった瞬間に嫌いになる」という心理状態を見て、私がすぐに莫大な女たちの顔が思い浮かんで、「そうだ、この心理はよく知っている」と膝を打ったのだった。私が思ったのは、こういうことだ……。