タイの歓楽街は素晴らしい。そんなところを野良犬のようにうろつき回り、ゴーゴーバーでひとりの女性と会って意気投合したとする。
「明日も会おう」
「OK。夜の8時に店に来て」
「分かった」
そういう約束をしたとする。軽い約束ではなく、本当に会いたいと思って言っており、相手も乗り気になっている。それで、翌日になって8時に店に行くと、女性は休んでいたり、居なかったりする。
約束は守られなかった。その時、どのように反応すべきなのだろうか。「約束したのだから守るのが当たり前じゃないか」と反応すべきなのか、「彼女に何かあったのだろうか?」と心配すべきなのか、「まあ、こんなものだ」と忘れるべきなのか。
常識的に考えたら「約束は守らなければならない」というのが正解だ。しかし、夜の世界にそんな表社会の一般常識を持ち出しても意味がない。そんなものは通用する相手じゃないし、そんなものが遵守されるような世界でもない。
夜の世界はとことん個人主義なので、自分の気分や自分の損得が最優先される。翌日になって気分じゃなければ約束なんか守ることもないし、もっと面白いことがあったらそちらが優先になる。
夜の住民は、一般常識も守らなければ、社会的ルールも守らなければ、店の決まりも守らなければ、客との約束も守らない。だから、「明日も会おう」という約束は「明日も会えればいいね」くらいの感想の共有だと思うしかない。
それが良い悪いを批評することもできるのだが、批評したところで意味がない。そういう世界なのである。
では「約束を守る女性」は無条件に素晴らしいのだろうか?
ここで妙な話をしたい……。