5月5日、東京のソープ街として名を馳せている吉原で殺人事件が発生している。
この日、私はたまたま吉原にいた。以前インタビューさせて頂いた紅子さんが、ゴールデンウィーク中に吉原にある遊郭専門の書籍を扱うカストリ書房で個展を開いているというので、見に行っている途中だった。(ブラックアジア:紅子さん。YouTubeで自分の人生を語る元高級ソープ嬢はどんな女性だったのか?)
カストリ書房に着くと、店主をしておられる渡辺豪氏が「2つ向こうの通りで何かあったらしくて警察やらパトカーが山ほど来てた」と教えてくれた。
慌てて見に行くと、すでに大勢の警官たちは撤去した後だったのだが、それでも何人かの警察官が残っていて現場検証の残務処理のようなものをやっていたので現場はすぐに分かった。
看板を見ると「夕月」という商号がかかっていた。この「夕月」の店内にも店外にも何人かの警察官が忙しくしているのが見えた。
新聞記者も現場に居残っていて取材をしていたので、声をかけて聞いてみると、どうやら30代の男性が、この店のナンバーワンの女性を刺したらしいというのが分かった。女性の容体を聞くと、「亡くなったようです」と答えてくれた。
「殺されてしまったのか……」
そう思いながら、私は夕月の茶色のレンガ壁の建物を見上げたのだった。
吉原では過去にも何度かソープ嬢が殺されたり、自殺したりするような事件があったが、まさか私が吉原に来た日に殺人事件が起こるとは夢にも思わなかった。ところで、この夕月だが……