もしかしたら、これから富裕層と貧困層の両方が日本を捨てるかもしれない。そういう時代がやってくるのかもしれない。もっと具体的に言うと、富裕層はもっと効率的に稼ぐために海外に向かい、貧困層は日本ではやっていけないので海外に向かうという流れになるのかもしれない。
現在、日本の通貨である「円」がどんどん価値を失ってきており、それがドルだけでなく多くの通貨に対しても円安となっている。もちろん、為替レートは国家の経済力を示すのと同時に、投機の対象でもあるのでその価値は刻々と変わる。
今が円安だから、永遠に円安が続くわけではない。円のレートは数十円単位で上にも下にも行くだろう。ただ、じっくりと考えなければならないのは、最終的にその国の通貨の価値は、その国の「国力」に収斂していくということである。
国が成長して経済的にも強くなっていけば、その国の通貨も強くなる。日本が高度成長を迎えて大きく富が蓄積された1980年代、日本円は一気に円高となって日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」となって世界に君臨した。
しかし、「現代の円安は国力が低下しつつある中で起こっているのではないか」と指摘する人も増えてきた。そうだとしたら、円安は最終的にもっと進んでいくということになる。
だから、富裕層は「どうせカネを稼ぐのであれば円を稼ぐよりも強い国の通貨(アメリカ・ドル)を稼いだ方が効率が良い」と考えて日本を出ていく。
そして貧困層は、「日本の時給が1000円で、アメリカの時給が5000円ならアメリカで稼いだ方が食って行ける」ということで、貧困でどうにもならない極貧層がむしろ割り切って日本を出ていく可能性がある。
かつて明治・大正・昭和初期には、そうやって東南アジアや欧米に向かった極貧の女性たちがいたのだが、彼女たちは「からゆきさん」と呼ばれていた。日本で食べていけないので、やむを得なく海外に出た。
日本で本当に出口のない貧困にあえぐ日本女性が、たとえば「日本で身体を売るよりも、外国で同じことをしたら、日給10万円になって月に200万円くらいは稼げるよ」と言われたら……