多文化別生。それぞれの国が独自の世界を構築して互いに干渉しない世界がいい

多文化別生。それぞれの国が独自の世界を構築して互いに干渉しない世界がいい

多文化共生というのは絵空事の話だ。そんなものが実現できていたら、人類は1万年前から平和だった。人種・宗教・言語・文化の違い……その他、ありとあらゆる違いが対立と衝突と暴力を生み出しており、人類はそれが解決できないのだ。だから、多文化別生でいいのではないか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

どこの国でも隣国は仲が悪いことが多く民族的な軋轢がある

タイ人はカンボジア人が大嫌いだ。これらの国は国境を接していて、その国境も厳密なものではないので、よく領有権の問題が起こる。プレアビヒア遺跡でもそうだが、どちらも「これは自分たちの歴史遺産だ」と譲らずに戦争になってしまうことすらもある。

カンボジア人はベトナム人が嫌いだ。ベトナム人はカンボジア人を「ぼんくらの百姓」だと常に見下していて、やはり民族問題や歴史問題や領土問題で揉める。

カンボジア国内にはベトナム人も多くいるのだが、このベトナム人はコーチシナのジャングルに暮らしていた貧しいベトナム人なので、カンボジア国内ではいじめと差別の対象になっている。

カンボジア国内で世界的な売春問題を引き起こした村「スワイパー」は実はコーチシナからきたベトナム人の村で、昔から差別されて常に放火の憂き目に遭っていた村でもある。(Amazon電子書籍:小説『スワイパー1999(カンボジアの闇にいた女たち)』

スラム売春のエリアだったプノンペンのトゥールコック地区もまた売春する女性たちの半数はベトナム人だった。みんな差別されてスラムに暮らしていた。私が好きになったベトナム女性もここにいた。

だいたい、どこの国でも隣国は仲が悪いことが多く、民族的な軋轢《あつれき》というのは常にある。他民族国家であっても、国の中は多文化共生になっているのではなく、多文化対立でそれぞれがモザイク状にひしめいているだけである。

アメリカでも白人は白人街、黒人は黒人街に暮らし、それぞれの輪と輪の一部(だいたいが都市部)が交差していて、そこだけが多文化共生になっているに過ぎない。

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「インドネシア人は嫌いだ、お前はインドネシアに帰れ!」

アジアで言えば、シンガポールは多文化共生国家である。中国系、マレー系、インド系が密接に関わり合って仲良く暮らしていると日本人は思っている。

しかし、私が好きになったスリランカ人を中国人が経営しているホテルに連れて行くと、中国人のオーナーは私に怒って「黒い女は連れてくるな」と吐き捨てた。スリランカ人の女性の肌の黒さを嫌っていて、あからさまに差別していたのである。

まさか、シンガポール人からそんなことを言われるとは思わなかったので、私はとても驚いたのだったが、それと同時にシンガポール人であっても、人種に関係なく誰もが仲良く暮らしているわけではないことに気がついた。

確かにインド圏の女性は外観からしてエキゾチックなので、それゆえに拒絶反応を持つ中国系もいるのかもしれないと私は思った。しかし、そんな単純なものでもなかった。

たとえばインドネシア人だ。彼らは肌が褐色であるとは言え、中国人や日本人に近い骨格である。少なくともインド圏の民族とは違って、見た目や恰好は「同じ」である。マレー人に近い。なら、中国系はインドネシア人を許容しているのか。

ある時、シンガポールのゲイランでインドネシア女性とふらふら歩いていたら、私の連れの女性が、シンガポール人の老人に「インドネシア人は嫌いだ、お前はインドネシアに帰れ!」といきなり怒鳴られた。

ちょうどその頃、ヘイズ(煙害)がとてもひどくて、インドネシアから流れてくるヘイズにシンガポール人がみんな迷惑して怒っていた時期でもあった。しかし、それにしても、女性を指さして「インドネシア人は嫌いだ」だとか「インドネシアに帰れ!」はひどい。

これには、インドネシア女性も激怒して「帰るから金をちょうだい!」と言って売られたケンカを買っていたが、インドネシア人が決して歓迎されて仲良くやっているわけではないのを私は肌感覚で知った。

他にもゲイランの売春宿のオーナー女性が、インドネシア人の女性をこき使いながら、必死で稼いでいるインドネシア女性を見下す姿も見ている。何のことはない。シンガポール人はインドネシア人を公然と差別していたのである。

インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、『ブラックアジア カンボジア編』はこちらから

コルカタでは、同じベンガル人同士で骨肉の争いをしている

私はインドの巨大商業都市コルカタをさまよい歩いていた時、ムンシガンジという地区に好んで沈没していたのだが、このムンシガンジのスラム地区に住むのはバングラデシュから密入国してきたバングラデシュ人であった。

バングラデシュ人はイスラム教徒で、インドの大半はヒンドゥー教徒である。

そして、イスラム教徒はインドでは非常に嫌われていて、ムンシガンジの女性たちも貧しいと言って差別され、宗教が違うと言って差別され、売春していると言って差別されるという三重苦の差別を受けていた。

コルカタの大半はインド人である前にベンガル人なのだが、同じベンガル人同士でそれぞれが骨肉の争いをしていたのだった。

私はインド女性も気に入っているのだが、実はバングラデシュの女性の気質の方がずっと好きだ。しかし、インド人とバングラデシュ人はお互いに政治的にも宗教的にも交わらず、相手を叩き合って交わらない。

同じことがインドとパキスタンにも言える。この両国の仲の悪さは「いつか互いに核爆弾を落とし合うのではないか」と言われるくらい険悪なのだが、これはもう「話し合ったら解決する」というほど単純なものではないのである。

こじれた民族憎悪は「解決しない」というのが私の見立てだ。100年後もきっと解決していないと私は確信している。

最近も、イスラエルとパレスチナが再び爆弾を撃ち合って人的被害を出しているのだが、これを見ても民族間の対立というのは、話し合ったくらいで消えるものではないというのが分かるはずだ。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

多文化別生=違う民族をそれぞれの国で分けて生きる

結局のところ、多文化共生というのは絵空事の話だったということだ。

そんなものが実現できていたら、人類は1万年前から平和だった。人種の違い、宗教の違い、言語の違い、文化の違い……その他、ありとあらゆる違いが対立と衝突と暴力を生み出しており、人類はそれが解決できないのだ。

だから、唯一私たちができる解決方法は、それぞれの民族がそれぞれの国で別個にそれぞれの文化を築き、他国に理解や関心や友好を求める人間、利害関係を調整できる人間が、他国の文化を邪魔しない程度に交流するというものだ。

「相互に距離感を持って付き合う」というのがインターナショナルの意味であり、それこそが真の付き合い方である。これは以前にも書いた通りだ。(ブラックアジア:違った文化や思想を持った国が相手を尊重しつつ相互に利益を引き出す方法とは

ひとつの国に違う民族をぐちゃぐちゃに入れるのではなく、むしろ無分別な移動や居住を禁止し、きっちりと区分けする。それぞれを別個に存在させ、必要に応じて相互にきちんと距離感を持って行き来させる。

1つの国に人種・宗教・言語・文化が違っている人間をぐちゃぐちゃに混ぜて1つの法律で縛ろうとするのは、どだい無理な話なのである。妥協点が見つからない争いが国家内で勃発する。

そうであれば、それぞれの民族がそれぞれの国で独自の文化を保ちながら繁栄し、理解ある人間や友好的な人間のみが「そこにお邪魔する」という形でやっていけばいい。

違うものを1つの国で一緒くたに混ぜる「多文化共生」を目指すのではなく、それぞれをきちんと区分けして必要な人間だけが行き来するという「多文化別生」を目指す。その方が現実的であると思うはずだ。

多文化共生=違う民族を1つの国に混ぜて生きる。
多文化別生=違う民族をそれぞれの国で分けて生きる。

それぞれの国は独自の世界を構築して、互いに相手に干渉せず、相手に興味や関心のある人間だけが相互に交わればいい。

・それぞれの民族が別々の場所で違う世界や文化を構築する。
・国家(ナショナル)は相互(インター)に利害を調整する。
・国民は、その国を好んで関わりを持ちたい人間だけが関わる。

どのみち、世界中のどこを見回しても「多文化共生」なんかうまくいかないというのは分かりきっている話なので、人類が本当に賢明であればいずれは「多文化別生」になっていくだろう。

ある国の文化が好きで、尊敬と敬意を持って接する。互いに別々に存在する相手の国を侵さないで「別生」する。悪い話ではないはずだ。

ブラックアジア
『ブラックアジア 売春地帯をさまよい歩いた日々(一覧)』

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